「……中尉、一体どうしたんだ」 バスルームから出て来たリザをまじまじと見たあと、女性である彼女に対してとても失礼な発言をしてしまった。 しかし、事態が事態なので仕方がないとも思う。 「借りますねって言いましたよ。もしかして聞いてなかったんですか?」 リザは私の視線や発言を特に気にせず、乾かしたばかりの髪を手で梳かしながら、すたすたとソファーへと向かって行った。 「いや…聞いていたけど…」 リザがテーブルを挟んだ私の向かい側のソファーに座るのを、一挙一動を見逃さないように思わず凝視してしまう。 今日はリザが私のアパートに泊まる日だ。 リザが風呂に入る前にパジャマ代わりになるものを貸してほしいと頼まれ、「好きなものを使っていい」と言ったことを、確かに覚えている。 しかし、まさかリザがパジャマとしてあんなものを選ぶとは思っていなかったのだ。 「…中尉…その、寒くないのか?」 「今日は温かいですし、暖房が効いているので寒くないですよ」 だからといって、セーター一枚のみで過ごすのはどうなのだろうと疑問に思う。 いや、リザ自ら素肌を晒してくれるだなんて大変喜ばしいことなのだが、彼女らしくない行動だと首を傾げてしまう。 バスルームから出てきたリザは、彼女の体にしては大きめの私の黒いセーター一枚だけを着ていた。 胸元はそれほど開いていないが、セーターの裾からはリザの素足が、あのすらりとした長い脚が伸びており思わず魅入ってしまう。 「……その、脚は寒くないのか?」 「寒くなったらブランケット掛けます」 「…だったら最初から何かはいた方が…」 リザはソファーの上に俯せに寝て、クッションをテーブル代わりにして彼女が私の部屋に持ち込んだ本を読んでいた。 セーターは丸い尻と太ももの半分をまるで焦らすように隠し、そして裾から伸びる脚はソファーの上で惜しみなく晒されている。 リザの脚は普段日に当たらないために真っ白で、黒い服とのコントラストが頭がくらくらしそうなほど眩しい。 「……なあ中尉、誘ってるのか?」 「何を馬鹿なことを言っているんですか」 真剣に聞いたのだが、本から顔を上げたリザにひと睨みされ、まともに相手をされないまま終わってしまった。 リザが少しでもその気を見せれば、すぐテーブルを乗り越えてあのしっとりとした太ももに縋りつくところだったのに。 やはりリザには誘う気などないのか。 これだからリザが素肌を見せても素直に喜べない。 「人の家でセーター一枚だなんて…。それは失礼に当たるんじゃないのか」 「私の家で裸でうろうろする人に言われたくないです」 綺麗なほっそりとした脚が目の前にあるというのに、ただ指をくわえて眺めているだけなのが辛くて八つ当たりすると、すぐに反撃されてしまった。 「というか、君のパジャマがあるじゃないか。私が勝手に持ってきたやつ。あれを着ればいいじゃないか」 「…私のものを無許可で大佐の部屋に持ち込むのは止めてください。私、ズボンってあんまり好きじゃないんです。ごわごわしていて」 「軍服はズボンじゃないか」 「仕事の話はまた別ですよ。とりあえず、仕事以外では堅苦しい格好はごめんなんです」 「…ふーん…」 確かに思い返してみれば、リザは自宅だとワンピースやスカートなど、体を締め付けないゆったりとした服を着ていることが多い。 そして、リザは夏場だと下着同然の姿で過ごすこともあり、そんな彼女を無防備だと叱るのが毎年恒例となっている。 「これがお気に入りなんです。暖かくて、肌触りが良くて、ふわふわなんです」 私は菓子のようにふわふわで柔らかくて、しかし弾力のあるあの太ももに顔を思いきり埋めたい。 きめ細やかな肌に頬を擦りつけ、手の平で撫でて柔らかさを味わい、甘い香りを堪能したい。 「それに大佐の匂いがしますし」 「え」 「……って、言ったら喜びますか?」 「…君ねえ…」 からかわれて拗ねる私を見て、リザが目を細めてくすりと悪戯っぽく笑う。 手を出したくても出せない時にそんなことを言われたら、思わず強行手段に出てしまいたくなる。 「大体な、そんな体勢だと下着が見えそうだぞ」 「下着つけてないです」 「えっ!?」 「嘘ですよ」 リザは本から目を離さずにさらりと告げた。 先程からリザにしてやられてばかりである。 悔しいが、しかし、女性らしいなまめかしい柔らかな線を描くリザの脚から目が離すことができない。 リザがソファーの上に無防備に投げ出した脚を組み替える度に、セーターがわずかに動いて、食い入るように見てしまう。 「……なあ、本当に誘っていないのか?」 「顔に本を投げ付けられたいんですか」 布の下に隠れていた太ももがちらちらと現れるのがあまりにも色っぽくって、素っ気ない答えが返ってくるのを知っていても思わず尋ねてしまう。 案の定、リザは本のページをめくりながら、興味なさそうに言った。 リザは本に夢中でもはや私のことが頭にないようだが、私は彼女に興味津々だ。 リザが形の良い膝から脚を折り、男性にはないまろみを持つふくらはぎが天井を向いている様子を目に焼き付けるかのように夢中で眺める。 鍛えられた屈強さと、女性らしい柔らかな肉が付いた引き締まったふくらはぎが絡み合う様は、まるで彫刻のように美しい。 あの触り心地が最高なすべらかなふくらはぎが無邪気にゆらゆらと揺れる様子は絶景であり、細い足首と雪のように白い足の甲は繊細なつくりをしていて、そして脚が組み替えられる度に布がずり上がってあらわになるみずみずしい太ももに頬擦りしたく…… 「大佐」 「ん?」 天を向いて揺れる脚を、まるで猫が猫じゃらしを追うように瞬きも忘れてじっと眺めていると、リザが呆れた声で私を呼んだ。 「脚なんか眺めて楽しいですか」 「ああ、とても楽しいよ。触らせてくれて、おまけに膝枕もしてくれたらもっと楽しい」 「……じゃあ触らせてあげません」 今まで私に興味のないそぶりをしていたリザが、ふと口元に妖艶な笑みを浮かべた。 魅力的な脚はまた無防備に組み替えられ、セーターの裾がまた大きくずり上がった。 「…やっぱり誘ってたんじゃないか」 「誘ってなんていませんよ。…ただ、大佐が真剣な顔でじーっと見ていて面白いなとは思っていましたけど」 私に感心のない振りをして、実はリザは密かに私の反応を見て楽しんでいたらしい。 手出しができずに我慢している猫に気付きながら故意に焦らしていただなんて、ずいぶん質の悪い猫じゃらしだ。 「大佐が勝手に誘われているだけですよ」 読書を楽しむ魅惑的な猫じゃらしは、遊ばれる道具だというのにすっかり猫で遊ぶ立場になっている。 しかし、いつかは猫のするどい爪が猫じゃらしに追い付いて突き刺さることを忘れてもらっては困る。 第一、猫じゃらしを狙うのは猫ではなくて凶暴なライオンかもしれないのだ。 「…今に見てろよ」 「はい?」 「ああ、何でもないよ。それより、早く大総統になりたいなー。ミニスカ政府を作るのだ!」 「……とことん呆れちゃいます」 潔癖な性格に似合わず大胆に脚を晒すリザは、そう言ってため息をつく姿すら息を飲むほど妖艶で、今すぐに爪を立てたくなった。 某大佐がデスクワークをサボるせいでせいで仕事がとても忙しく、なかなか読むことのできなかった本を片手に、まるで水の中にダイブでもするようにベッドの上に倒れ込んだ。 口元には自然と笑みが浮かんでしまう。 洗い立ての真っさらなシーツの上に体を埋め、まるでプレゼントをわくわくしながら開ける子供のように本の表紙を開いてページをめくる。 横になりながら本を読む時の癖で、無意識のうちに膝を折り、足の先からふくらはぎをベッドから浮かせてしまう。 宙をふらふらとさ迷う脚を何度も組み替えていると、私が遊んでいるのかと思ったのか、ベッドに乗り上がった愛犬が太ももにじゃれついてきた。 ブラックハヤテ号の柔らかな毛並みが脚をくすぐり、そして太ももを覆うワンピースに顔をこすりつけてくる様子が可愛らしくて、微笑んでしまう。 堅苦しい軍服を脱ぎ捨て、ただの女に戻る素晴らしい至福の時間だ。 しかし――ここまでは良いのだが、ひとつ問題があった。 「中尉の脚はすっべすべだなあ〜」 脚にじゃれついているのは黒い子犬だけではなく、黒い髪の毛の大人までいるのだ。 「…やめてください」 「…ああ、絹のような肌触りだ…しっとりと上品な質感…」 大佐は先程から私の言うことなど一切聞いてくれない。 私の言葉を無視して、大佐はうっとりとふくらはぎに触れている。 大佐は私の脚の横にぴったりと寝そべり、まるでペットでも愛でるように私の脚を撫でている。 うしろを振り向き、私よりずいぶんと下、ベッドの足元のところで横になっている大佐をきつく睨む。 「やめてくださいって言っているんです!」 はしたないが、虫を追い払うかのように、大佐が縋りついているふくらはぎをぶんぶんと振り乱す。 急に暴れ出した脚を見て、ブラックハヤテ号が驚いているが仕方がない。 「い、痛っ!痛いぞ中尉!…いきなり蹴るとは…ほう、まさかそういうプレイか?」 「馬鹿ですか!」 嫌だから纏わり付くなという意味を込めて脚で蹴ったら、何故か私の意志は伝わらずに、むしろ大佐に喜ばれてしまった。 天を向いていたはずのふくらはぎは完全に大佐にがっちりと拘束され、彼の腕の中にある。 まるで赤子を抱くように胸に脚を抱いて何が楽しいのだろうか。 大佐の手の平は、初めは足の甲やくるぶしなどを触っていたのに、飽き足らないのか、膝やアキレス腱を通過してだんだんと上に迫ってくる。 「君の太ももは実に素晴らしいよ、中尉。ふわりと優しく包み込むように柔らかいのにしっかりと弾力があり、そして絵画や銅像顔負けの美しい線を描いている。太っているわけではないが、肉付きが最高にいいんだ」 「…はいはい」 もう私の言うことは聞き入れてくれない大佐の相手はせず、それよりも、楽しみにしていた本を読むことに集中することにした。 大佐の言動にいちいち反発せず、彼の言葉を軽く聞き流して適当に答え、大人しく本の文章を目で追えばいいのだ。 「そして日に焼けておらず真っ白なんだ!まるで雪のよう…いや、大理石だ!…いいや違う、大理石より見事だ。その上このきめ細やかなみずみずしい肌を持つなんて…さすが中尉だ!さすが私の中尉!」 「…うるさいです」 大佐の相手をせずに本に集中しようと決めた数秒後に決心は儚く崩れた。 「まるでお菓子のようふわふわだなあ…食べたいよ」 「食べないでくださいね」 「そう言われると噛み付きたくなるな…。…こんなに細い脚をしているのにむちむちしているなんて…憎いぞ中尉!」 「……って、どこに頭乗せているんですか!お尻は枕じゃありませんっ!」 「おお、恥ずかしがらないのか中尉らしいなあ。君のそういうところが好きだぞ」 「ちょっとっ!ワンピースをめくるのもやめてください!大佐ってば!」 「あ、今日はこの下着かー。そういえば中尉、今日のワンピースすごく可愛いぞ」 蹴っても叱っても文句を叫んでも大佐は喜ぶばかりでまったく効果がなく、今さらブラックハヤテ号のように躾をできるわけではないから困っている。 「中尉、それを取ってくれないか」 「はい」 「あと、あれも」 「どうぞ」 「ああ、ありがとう」 「いえ」 「あー…文字ばかり見ていると眠くなってくるなあ…。あとで君の愛情たっぷりのコーヒーをいれてくれないか」 「愛情の入っていないコーヒーならいくらでもいれて差し上げますよ」 「中尉は相変わらず冷たいなあ…。あ、そういえば久しぶりに君の手料理が食べたいんだが」 「…大佐、大人しく書類を読んでください」 「君のパスタが食べれるんならいくらでも書類を読んで差し上げるぞ!」 「……大佐が、定時に仕事を終えることができたら…考えてもいいですけど…」 「よし、決まりだな。ちょうどいいワインがあるんだよ」 「大佐、まずは仕事してください」 「はいはい、分かってる分かってる」 「返事は一度で結構です」 「……うむ、しかし肩が凝るなあ」 「最近は部屋でデスクワークばかりですからね。私でよければあとで揉んでさしあげましょうか?」 「ああ、ありがとう。頼むよ」 「あのぉー…」 「ん?」 「なあに?ハボック少尉」 大佐と中尉にいつ声を掛けて良いのか分からず、執務室の扉を開けたのはいいものの、しばらく無言でそこに立ち尽くしてしまっていた。 大佐と中尉は他者の侵入を許さないような完全に二人きりの世界に入っていたが、一応俺が入室したことには気が付いていたらしい。 「…ああもう…俺はどっから突っ込めばいいんですか…」 「何をだ」 「どうしたの?」 執務室の扉を開けると、誰かさんがサボるために山のように溜まっていく書類だらけの地獄ではなく、そこには楽園が広がっていた。 ここは神聖な職場だということをつい忘れてしまう。 大佐と中尉はソファーに座り、そしてなんと大佐は中尉に膝枕をしてもらい、東方司令部男子皆の憧れの、あの脚線美の上で寝そべりながら書類を読んでいるのだ。 しかも、大佐と中尉の会話は「それ」や「あれ」だけで通じるという仲良しっぷりを見せ付けてくるし、何より、羨ましいほど中尉が大佐に甘すぎる。 「…大佐、あんた、だらしなさすぎでしょ…」 「中尉自らが『大佐、どうぞいらっしゃい』と言ってくれたんだぞ。はは、いいだろう!そこで指をくわえて見ていろ!」 「ハボック少尉、違うのよ。大佐が膝枕をしてくれないと仕事をしないっていうから、仕方がなくやっているの」 口があんぐりと開いたまま閉じない。 膝枕をしてほしいと下心丸出しで要求する大佐も大佐だが、それを簡単に受け入れてしまう中尉も中尉だ。 「仕事なんてしたくない」と駄々をこねる大佐に対して、いつも中尉は鷹の眼をきつく吊り上げ、思わず耳を塞ぎたくなるような大声で怒鳴り大変厳しいが、時にこうして甘やかすからこんなわがままな上官が出来上がってしまったのではないだろうか。 「……あの、中尉…大佐に甘くないですか?」 「あら、どうして?」 書類を乱暴に扱う大佐を嗜めながら、中尉は心底不思議そうに首を傾げた。 俺に自慢するようにがははと笑う大佐を見下ろす中尉は呆れているものの、表情は慈愛に満ちており優しげだ。 そういえば、中尉は、大佐が仕事中にわがままを言い出すと睨みをきかせて無言で「さっさと仕事をしろ」と促すが、結局は折れて大佐に付き合うことが多い。 その様子は子供を無条件に可愛がる親のようにも見えるし、恋人の無茶苦茶な願いを少し無理をして叶える一人の女性のようにも見える。 ――中尉は「仕事をしない大佐」にではなく、「大佐」自体に甘いということがよくよく分かった。 この先も、中尉は駄目人間な大佐を「仕方ないわね」なんて笑って甘やかすだろうから、大佐のわがままはますますひどくなるだろう。 中尉はいつも大佐のデスクワークに対する不真面目さをこっぴどく叱るが、それに懲りることなく大佐が仕事をせずに好き勝手に振る舞うのは、中尉にも原因があると思う。 困る一方で、中尉に大切にされ、そして甘やかされる大佐があまりに羨ましくて、俺も階級が大佐になれば好き放題遊べるんじゃないかと馬鹿なことを考えてしまった。 もはや生活をするための手段のひとつとなっている錬金術を使って鍵を壊し、ある一室の扉を開けるとそこにはリザがいた。 当然だ。 ここはリザが住むアパートであり、私が勝手にドアの鍵を破壊してこじ開けた部屋は、彼女の家なのだから。 リザが自らの部屋にいるのは説明するまでもない当たり前の話だが、しかし、目に飛び込んできた光景があまりにも衝撃的すぎたため、私は扉を閉めるのも忘れて玄関に立ちすくしてしまった。 すぐ目の前にリザがいるが、それは私が知るいつもの彼女ではない。 目で捉えた膨大な情報に体全部が振り回されて、視覚以外の部分が機能しない。 私とリザの視線が交わるこの小さな空間だけ、まるで時が止まってしまったかのような感覚を覚えた。 私とリザは少しも身動きせず、ただ黙ってお互いの姿を見つめ合っていた。 しかし、部屋の扉がばたんと自動的に閉まる大きな音ではっと我に返った。 そして、次に、私は耳をつんざくような悲鳴がアパートの廊下まで響き渡ることを覚悟したのだが―― 「あら、中佐」 私の予想に反し、リザの唇は耳を塞ぎたくなるような高い叫び声ではなくて、司令部にいる時よりも幾分のんびりとした口調で言葉を紡いだ。 「もう…足音が聞こえたので、まさかとは思いましたが…。勝手に鍵を壊して部屋に入るのはやめてくださいと何度も言っているでしょう」 リザは私の突然の訪問にのみ驚き、いま私と向き合っていることに関しては何とも思っていないらしい。 くらりと目眩がしたような気がした。 扉が閉まる音を合図に止まった時間が動き出したように思えたが、それはリザだけであり、私は未だこの状況を飲み込めず、言葉のひとつも発することができずにいた。 「…あの、中佐?聞いてますか?」 リザが首を傾げると、水分を含んだ短い金髪も一緒に揺れ、剥き出し肩に水滴がひとつ零れ落ちた。 リザの大きな瞳にじっと覗き込まれ、彼女の猫のようにしなやかな体を遠慮なくまじまじと見ていたこと――いや、に魅入っていたことに気が付いた。 「――…な、なっ、…何なんだ!」 女性に対して人差し指を向けるという失礼な行為を行い、やっと唇から出てきた言葉がこれだった。 頭の中には、リザに言いたいことが山のようにまだたくさんある。 「って、ああ、少尉!すまんっ!すまない!私はそんなつもりじゃなかったんだっ!」 東方で一番の紳士である私らしくなく、不躾にもリザの姿を目に焼き付けるかのようにじろじろと見てしまったことを恥じ、慌てて彼女に背を向けた。 そして、先ほど勝手に鍵を壊して開けてしまった扉と向き合って、思い付くままに叫んで謝る。 夜の街から自宅に帰る前、何故か突然リザに会いたくなり、電話も約束もなしに急に彼女の部屋に押しかけただけで、私は彼女のこのような姿を見るつもりは決してなかったのだ。 「…そんなつもりって何のことですか?」 焦るわ慌てるわで、混乱のために汗を垂らしながら弁解をする私に対し、リザは相変わらず恐ろしいほど冷静だ。 おそらく、リザは紅茶色の目を無邪気に丸くし、きょとんとした表情を浮かべて私の背中を見つめているのだろう。 「どっ、どうして君はそんなに落ち着いているんだっ!?」 「…どうしてって言われましても…。中佐こそどうしてそんなに慌てているんですか?」 「…だって普通は…、普通はそんな格好を見られたら女性は驚いたり怒ったりするものなんじゃないのかっ!?」 「え?」 こちらが一人で焦っているのが馬鹿らしくなってくるほど、リザはいつも通りの調子で落ち着いて聞き返してくる。 「『え?』じゃないっ!今の自分の格好をよくよく見なさい!」 「……あ…」 数秒ほど間があり、部屋がしんと静かでなければ聞こえないほどの小さなリザの声が私の耳に届いた。 どうやら、リザは、私に促されてやっと自分がどんな姿をして私の前に立っているか気付いたらしい。 今、リザの体はいつものように堅苦しい軍服に覆われているのではなく、薄っぺらい下着しか身につけていない。 リザが自分のことに関して鈍いことはごくたまに役立つこともあるのだが、あまりにも鈍感すぎるために腹が立つことがほとんどで、今がいい例だ。 「…ごめんなさい、中佐…。みっともない姿をお見せしてしまって…。いつもこの格好で過ごしているので気付きませんでした…」 惜しみもなく晒されたすらりと伸びる長い手足はほっそりとしていて美しく、特になめらかな線を描く太ももはなまめかしく、みっともなくなんかない。 おまけに、厳しい訓練を受けた体はしっかりと鍛えられて引き締まっているというのに、それにも関わらず、剥き出しの肌はお菓子のようにふわふわとどこもかしこも柔らかそうで美味しそうだ――なんて、言えるわけがないが。 「…いや、どう考えても謝るのは私の方だろう…」 世の中の女性が持つ常識と比べると、どこか考えが大きくずれていることが分かるリザの言葉を聞いて、思わず深いため息がもれた。 「少尉、本当にすまん…」 リザの部屋の中はシャンプーと石鹸の優しい香りに満ちている。 そしてリザはその甘い香りを身に纏っており、熱いシャワーを浴び熱を持った肌はほんのりと桃色に染まっている。 リザはつい先ほどまで風呂に入っていたらしい。 そして、リザがバスルームから玄関を横切ってリビングへ向かう時、私がちょうど部屋の扉を開けてしまい、彼女と鉢合わせたのだ。 これが、いつもは軍服の下に隠されているはずの、抜けるように白い肌と、そして彫刻のように見事にくびれた美しい体を、偶然にも目撃してしまった経緯だ。 「どうして中佐が謝るんですか?」 「どうしてって…普通は…そんな姿を男性に見られたら女性は嫌だろう…。セクハラだとかいやらしいだとか、ぎゃーぎゃーと叫ぶのが普通じゃないのか?」 今まで関わりを持ってきた数々の女性達の行動を思い浮かべながらリザに問い掛ける。 「…じゃあ…私は普通ではないようですね。嫌じゃないですから」 確かにそのようだ。 私の知る女性達とリザの考えることはあまりにも違いすぎる。 「…君は…私にその姿を見られて恥ずかしくないのか?」 「はい」 「…その…怒る気もないのか?」 「ええ」 美しく見えるよう外では見栄を張ってお洒落をする分、自宅では体を締め付けないようなラフな服装で過ごし、特に夏場には下着姿のみで部屋で寛ぐ女性達と付き合ったことが過去にある。 その女性達に対しては特に何も思わなかったが、リザのこの考えなしの軽い答えには怒りを覚えた。 この場で押し倒したいほど魅力的なまろやかな体つきをし、その肌を無防備に晒すリザは、男性に対してあまりにも危機感がなさすぎる。 あとで耳が痛くなるほど説教をしなければならないと心に決めた。 「…少尉、話があるんだが…その前にとりあえずパジャマか何かを着てほしいんだが」 「はい。…上官にはしたない姿を見せてしまって申し訳ないです…」 「あーっ、もう!そういう問題じゃないんだよっ!君は何から何まで間違っている!上官だからじゃなく、私が男だから服を着ないと駄目なんだっ!」 「…え?」 「とりあえず何か着なさない!」 「…うーん…でもラジオがいうには今夜は熱帯夜なんですよね…。…今、中佐が上官ではなく個人としてここにいるならば、私は別にこのままでも…」 「駄目だっ!駄目!」 「下着だけだと楽なんですけど…やっぱりこの姿は失礼ですよね」 「だから上下関係の問題なのではなく、私達が男と女であるからで…。…まあいい、あとでゆっくり話そう。とりあえず何か着てくれ」 「はい」 プライベートの空間である自宅での格好を私が制限するなどわがまますぎるが、これはリザのためなのだ。 これ以上リザに裸に近い格好で側にいられると、危機感が足りないと説教をする前に、彼女を組み敷いて好き勝手に暴れてしまいそうで怖い。 他の女性ならば好きなだけ存分に下着のみの姿で過ごしても構わないが、リザだけは駄目なのだ。 リザはこの世で一番大切なひとなのだから、雄の身勝手な欲望で傷付けることなどしたくない。 それから、もしリザが下着姿でいる時に私以外の男性が部屋に入り込んで来たらどうするつもりなんだと怒りと不安が胸を過ぎる。 これもリザが着替えたらきつく言い聞かせなければならない。 「…あの、中佐」 すぐ近く、私の背後からリザの声が聞こえ、ゆっくりとうしろを振り向くと案の定そこにはいつの間にか彼女がいた。 雪のように真っ白で、私よりも一回り小さなリザがすぐうしろにいることに驚き、ちらっと見ただけで慌てて視線を逸らし、再びドアと向かい合った。 しかし、深く開いた胸元から柔らかそうな膨らみと黒い影が覗き、リザが上半身にキャミソール一枚しか身に纏っていないことが一瞬見ただけでもすぐ分かってしまった。 おまけにそれが目にしっかりと焼き付いている。 絹のように艶やかな肌を晒しているリザの今の姿は、私の鉄のような理性がいとも簡単にぐらつかせる。 「…な、何だ」 「…中佐、もしかして照れてるんですか?」 「……どうしてだ」 「顔が赤いですよ」 それだけ言い残すと、リザは何事もなかったかのようにすたすたと歩いてバスルームへと向かってしまった。 リザに言われた通り赤い顔を片手で覆う私が玄関に一人ぽつりと残される。 「女の人の裸なんて見慣れているでしょうに」 バスルームの扉越しに、「変な中佐」というリザの心底不思議そうな呟きが聞こえた。 「……君は特別なんだよ」 誰に言うわけでもない文句に似た愛の告白は、ため息と共に消えた。 ※以下の話は大人向けの表現を含みます。 体を激しく揺さ振られるのに合わせてシーツと髪がもつれて合い、布も髪の毛もぐしゃぐしゃに乱れ、そして同時に視界もぐらぐらと揺れる。 定まらない視線の先に、脱ぎ散らかした服や薄暗い壁が飛び込んできては消えてまた現れる。 視界にめまぐるしくたくさんの景色と情報が入り込むことが辛く、そして揺さ振られる度に頭に痛みが走り、まるで酔っ払っているようだ。 酒など飲んでいないのにアルコールでも入っているように体と頭が異常に熱くてたまらず、唇からもれる不規則に息も心なしか熱っぽい。 いつもこの時は何もかもが一緒に溶けてしまいそうなほど、肌も中佐も取り巻く空気をも熱を持っているけれど、今日は普段以上に熱い。 あまりの熱さに、まるで熱中症にでもなったかのように意識が遠ざかっていく。 「少尉」 急に繋がりが深くなり、開いていた唇から甘ったるい声がもれるのを、どこか遠くの世界で聞いていた。 中佐に名前を呼ばれ、深い水底から水面へと浮き上がるようにゆっくりと頭が今の状況を理解し、次に意識が彼へと向いた。 緩慢な動きで首を動かして中佐を見上げると、そこには不機嫌そうに顔をしかめている彼がいた。 「…何を考えていた?」 汗ばんだ指先で顎を乱暴に掴み上げられ、視線を中佐に合わせるように持ち上げられた。 その小さな動きだけでも体の中に渦巻く熱が爆発しそうで、くらくらと目眩がした。 「まさか仕事のことじゃないだろうな」 行為中には似つかわしくない機嫌の悪い低い声で、中佐が責めるように問い掛ける。 気分が悪く目眩までするのは連日の残業のせいだと考えていたなんて、とても言える雰囲気ではない。 思わず中佐から目を逸らしてしまった。 「…そうか。ほかのことを考える余裕があるのか」 どう答えるか迷っていると、沈黙を肯定ととった中佐が、急に私の両脚を持ち上げると肩に担ぎ上げた。 驚いている暇もなく、中佐が荒々しく私の中に押し入ってくる。 「…痛…っ」 腹を圧迫されるような痛みに眉を歪めて思わず呻いても、中佐は動きを止めてくれなかった。 いつもは中佐に貫かれる度に頭からつま先まで甘い痺れが走るのに、何故か今日は彼が動く度に頭痛がするだけだ。 汗ばんだ素肌同士を合わせることが好きなのに、今は抱き寄せられても熱を逃がせなくて不快感が増す。 喉を反らしてただ必死に酸素を貪った。 目眩がして、頭が重くて、苦しくて、そして熱い。 「…中佐…待って…っ」 動くのを一度止めてほしくて中佐の胸を押し返そうとしたけれど、腕に力が入らなくて驚いた。 か細い声で何とか中佐に呼び掛ける。 「…だめ…、中佐…」 「何?」 私がほかのことを考えていたことが気に食わなかったのか、未だに中佐は怒っており、案の定、上から不機嫌な声が降ってきた。 鋭く細められた黒い瞳に冷たく見下ろされ、思わず肩をすくませてしまう。 「…あの…、…う、動かないで…ほしいの…」 それでも、このまま乱暴に体を支配され続けると、頭痛や熱に蝕まれている体が壊れてしまいそうな気がして、必死に訴える。 「断る」 しかし、頭痛を堪えながら紡いだ精一杯の懇願を中佐は軽くあしらった。 「…そんな…中佐…っ」 私の抵抗の言葉を中佐は唇を合わせることで飲み込んだ。 舌を吸われると背筋が疼いてびくびくと震える一方で、頭はのぼせてしまったように意識も感覚も鈍くなっていき、体がどうにかなってしまいそうで怖い。 「…い、いや…っ!」 体が思うように動かず、逃げる代わりに声で何度も抵抗をしたけれど、中佐はそれを聞き入れてくれなかった。 体を好き勝手に荒らされる苦しさのあまり涙がぼろぼろと頬を伝い、耳の中に入り込む。 寝室には私の泣き声と結合部が奏でる水音だけが熱っぽく響いていた。 中佐が体に入り込む度に体の芯が甘い刺激が震えるけれど、同時に膜が張ったように意識が朦朧とし始め、まるで暗闇の中に落ちていくようで恐ろしい。 「…熱い…っ」 まるでうなされるように、「熱い」と何度も喘ぐ合間に呟いた。 繋がっている部分も、触れ合っている肌も、髪も頭もすべてが熱くて今にも熱に溺れてしまいそうだ。 「…あつい…」 何度も攻めたてられついには頭が真っ白になり、軽く飛んだ意識が戻ると、中佐が私の体からいなくなっていた。 やっと中佐から解放された。 最後の力を振り絞ってだるい手足を動かし、すぐに彼の下から抜け出した。 中佐に背を向け、大きく乱れた息を深呼吸をすることで落ち着ける。 額や頬に滲む汗が欝陶しいが、体が重く、手を少し動かして拭うのすら困難だった。 まだ視界がぐらぐらと揺れているようで、気分が悪い。 「おい、少尉」 すぐうしろからいつもより低い声が聞こえた。 中佐はまだ怒っており、今から説教でも始めそうな気迫が背中に伝わる。 肩を掴まれたかと思えば中佐の胸に無理やり抱き寄せられ、背中に彼の温かさを感じて眉をしかめた。 「…一人に…してください…」 先ほどより頭痛がひどくなり、引き寄せられるという些細な振動ですら痛みに変わる。 情事の名残の熱気がまだ冷めず肌は熱いままで、唇からもれる息も熱い。 先程より体が熱くなってきたように思えるのは気のせいだろうか。 「……そんなに私が嫌なのか?」 少し寂しげにそう呟きながら、中佐は汗にまみれた首筋に容赦なく歯をたてた。 軽い痛みを感じて目を閉じると、目尻に溜まっていた涙が零れ落ちる。 「…熱いんです…」 中佐がむっと顔をしかめたのが、彼の表情を見なくても分かった。 「熱い熱いって、君はそればっかり……」 私に対する文句を長々と言い始めるのかと思った中佐の声が、ふと途切れた。 「…熱い…?」 中佐は独り言のようにそう呟くと、急に私の背中や首を、何かを確かめるように手の平で触り始めた。 べたべたと触られてますます具合が悪くなって気がしたが、中佐から逃れる気力がなく彼にされるがまま大人しくしていた。 「熱いじゃないか!」 体中を触り終わったあと、最後に額に手を当てて中佐が叫んだ。 耳元で大声で叫ばれ、頭にキンと鋭い痛みが走る。 「…だから熱いって…言っているじゃないですか…」 「馬鹿!熱があるって言っているんだ!」 「…え…?」 「『え?』じゃない!ああもう服を…!いや、まずはシーツだ!」 中佐は一人で大声で喋りながら、急いでベッドからがばっと身を起こした。 中佐は私の裸の体をブランケットで包み込むと、「少しここにいなさい」と床に座らせた。 そして中佐は素早くシーツを取り替え、新しいシーツの上に私の体をそっと横たえてくれた。 ひんやりとしたシーツに身を沈めていると、真っさらな布の冷たさを味わう暇もなく、中佐に体の汗をタオルで丁寧に拭かれ、そしてパジャマに着替えさせられた。 おまけに、中佐は額の汗や頬の涙の跡まで甲斐甲斐しく拭ってくれた。 「…すごいですね…」 「何がだ?」 自らも服を着た中佐を見上げ、彼に手渡された水を飲みながら思わず感心の声を上げた。 キッチンから戻ってきた中佐は水で濡らしたタオルと、氷を詰めた枕を手に持っている。 私に熱があると気付いてからの中佐の行動は「早い」の一言だった。 だるくて動けない私の代わりに、司令部ではなかなか見ることのできない俊敏さでてきぱきと行動し、介抱してくれた。 「…まったく、熱があるなら先に言いなさい!だったらしなかったのに!」 私の脇の下から抜き取った体温計を見た中佐が、表示されている温度にぎょっとしながら怒鳴る。 「…気付かなかったんです…」 空になったグラスを中佐に渡し、再びベッドに身を横たえる。 中佐は額の上にタオルを、そして首の下には氷枕を置いてくれた。 熱が和らぐような冷たさが気持ち良くて思わず目を細める。 「具合が悪いことにも気付かなかったのか!?」 「…やめてって言ったじゃないですか…」 「……そういえば…そう、だったな…」 中佐の声が急に小さくなり、気まずそうに私から視線を逸らした。 中佐の怒鳴り声が響いていた寝室に急に沈黙が訪れた。 中佐は居心地が悪そうに何の面白みもない壁をじっと眺めている。 グラスをテーブルの上に置いても、まだベッドの縁に腰かけている中佐を見上げた。 「中佐」 「…ん?」 「寝ないんですか?」 「ああ、すまん。君は病人だったな。もう寝た方がいい。じゃあ、私は行くよ」 「…え?」 「私はリビングにいるから、何かあったらすぐに呼びなさい」 中佐はそう言ってベッドから立ち上がると、私の頭を軽く撫でた。 「…中佐、ここで寝ないんですか?」 中佐を見上げたまま、何故ここで寝ないのかと首を傾げてしまった。 いつものように中佐はここで寝るものだと思っていた。 私のその考えが意外だったのか、中佐は少々驚いた様子で私を見下ろしたまま、しばらく黙っていた。 「…一人になりたいんじゃないのか?」 「…それ、気にしてたんですか…」 何気なく言った言葉を中佐が気にしていただなんて、今度は私が驚いてしまう。 あれは不機嫌な中佐にいじめられるそうになるのが嫌だったから言ったのだ。 熱があることに気が付き、今は優しく気を遣ってくれている中佐に対しては、あんなことは言わない。 「…か、風邪うつすのは嫌ですけど…。…一緒に寝てくれませんか…?」 熱があることを自覚すると、さらに体がだるくなったような気がした。 頭も体も熱く、そしておもりでも付けたように重くて、喋ることにもいちいち体力を使う。 普段の私ならばややこしい遠回しをした言い方をして、何とか中佐をここに留めただろうけど、今は長々と話す気力はなかった。 いつもの無駄なプライドや意地を取り払い、なるべく短く言葉で中佐にここにいてくれるようにお願いすると、ずいぶん素直な物言いになってしまった。 自分が放った言葉を思い返すと、頬がまた熱を持ったような気がした。 「…いいのか?」 中佐の問い掛けに、恥ずかしさを隠して小さく頷く。 「…やはり病人は心細いものなのかな」 中佐はわざとらしい笑顔を作り、ぎこちない動作でベッドの中にもぐり込んできた。 心細いわけではなく、私はただいつも通り中佐に側にいてほしいだけだ。 「…冷たい…」 先程の出来事から私に遠慮をしているのか、少し離れた位置にいる中佐に私から寄り添い、脚を絡ませる。 普段ならば私の体の方が体温が低いのに、今は中佐の肌の方が冷たくて気持ちが良い。 「…少尉は熱いな」 何とか中佐に近付こうとする私に応えるように、彼は控え目に腕の中に私を招き入れてくれた。 大好きな頼もしい胸に抱かれると、不思議と体を苦しめるだるさが癒えていくように思えた。 「…その…さっきはひどいことしてすまなかったな」 熱い肌を冷ましてくれるかのように、中佐のひんやりとした指先が私の頬を撫でる。 「…意地悪な中佐は嫌いです」 中佐の指の動きがぴたりと止まった。 「…でも今は好き…」 先程は涙が出るほど嫌だったけれど、私のために看病なんて慣れないことを一生懸命してくれた中佐はやはり愛おしい。 中佐の心地良い温度と広い胸に身を委ねながら、重たくなってきた瞼を閉じた。 ちなみに中佐の指先はまだ硬直したままだ。 極力無駄な言葉は省いたつもりなのだが、もしかしたら少し、いやかなり素直になりすぎただろうか。 風邪が治った時に恥ずかしくて後悔するだろうと今から心配をしつつも、だんだんと意識が遠ざかっていった。 |