※大人向けの話を置いています

書斎にて  
今日のわんこ  
ベビーフェイス(最終回後)  
エリザベスちゃん×ロイさん  
マスタングの一人遊び  


 


「…大佐」
「えっ?中尉?」
机に向かい本の中の文字を追うのに夢中になっていた大佐は、まるで幽霊のようにぬっと書斎に現れた私の方へ振り返り、驚いて目を丸くした。
「何だ、その格好」
「…寒いんです」
頭の上からブランケットを被っている私を見て、大佐が心底不思議そうに尋ねる。
ブランケットに包まったまま、ひんやりと冷たくて暗い廊下をひたひたと裸足で歩いてきたのだ。
「寒くて目が覚めたんです」
「怖い夢を見たとかじゃなくて?」
「違いますよ」
先ほど、肌寒くて目が覚めると、いつもなら横にいるはずの大佐がいなくて、目を擦りながらふと違和感を覚えた。
違和感の正体を言葉にするならば、何だか悔しい気がするけれど「寂しさ」だろうか。
私を抱き枕代わりにする大佐に対して、苦しいや暑苦しいなどと文句を言いながらも、私にはそれが心地の良い日常になっていた。
本を読み終わったらすぐにベッドに行くからという大佐の言葉を信じて先に寝ていたのだが、彼を待っている間につい眠ってしまった。
「中尉」
おいでと手招きをされて、ブランケットを引きずりながら書斎の入口から大佐の元へ行くと、彼は椅子に座ったまま私を膝の上に乗せた。
「…うそつき」
大佐は、司令部で私が彼に黙って少し席を外すだけで私に口うるさく文句を言うのに、彼は私との約束は守る気がないらしい。
いつも大佐に振り回されているお返しに、彼を困らせてみたくて、わざと子供じみたことを言う。
「うそつきって…ただ少し夢中になりすぎただけだよ。ちゃんと君と一緒に寝るつもりだった」
私の予想に反し、大佐はにこりと嬉しそうな笑みを見せる。
「なあ、中尉…私が恋しかったのか?」
「違います。ただ寒かっただけです」
「どうかな」
私は大佐を困らせたかったのに、逆に彼を喜ばせるだけで終わってしまった。
大佐はいつも、私の予想していたこととはまったく別の考えもつかない行動をとって、私を驚かせる。
大佐のその言動はたまに私を呆れさせたり怒りを買ったりするけれど、結局いつも私は彼のことを許してしまうのだ。
今の私にしか見せない笑顔だって、ずるい。
「今日の中尉は大胆だなー」
「だから違います」
不機嫌さを顔に出して否定をしつつも、大佐の胸に頬を擦り付ける。
大佐の体温がじんわりと伝わってきて温かい。
大佐の大きな手でブランケット越しに背中を撫でられると、とても安心してまた寝てしまいそうになる。
古い本の匂いが書斎中に満ちており、そして汚い字で走り書きのされたたくさんの紙の山があるこの部屋は、父の書斎を思い出す。
父の書斎を思い出した懐かしさからか、大佐と出会ったばかりの、まだ私が少女だった頃のことがふと頭を過ぎった。
父に休憩を与えられた大佐が、家事をしていた私の手を急に握って外へ駆け出し、強制的に家の周りを散歩させられた場面が頭に浮かぶ。
今と変わらず、昔も大佐の行動はいつも突拍子のないものだったけれど、この世界に一人ぼっちだと思っていた幼い私に、彼は世の中はもっと広いと教えてくれた。
父は私のことをちゃんと愛していると、大佐だけが教えてくれた。
父の不器用な愛情に恐る恐る手を伸ばして触れることができたのは、大佐がいたから。
大佐が私に与えてくれるものは、昔も今も、多少迷惑な部分もあるけれど、寂しさをも埋めてくれる愛おしさに溢れたものだと、今、改めて思う。
「…大佐」
「うん?」
「私…大佐と別の出会い方をしていても、大佐のことを好きになっていたと思います」
「え?」
大佐は私の言葉を聞いて、珍しいといった様子で目を丸くした。
なかなか素直になれない私は大佐に対して「好き」だと告げたことが滅多にないから、当然だろうか。
「…意外だな。中尉がそんなことを言うなんて…本当に大胆だ。嬉しいけど」
「私も意外です。眠いからでしょうか」
「じゃあさ…例えば、ご主人様とメイドとして私達が出会っていたとしても、中尉は私のことを好きになっていたってことかな?」
「例えがなんか嫌ですけど…そうなりますね」
「私も…どんな出会い方をしていても、中尉のことを愛して、こうして恋人同士になっていたと思うよ」
大佐は子供のように無邪気に頬を緩めると、嬉しそうに私の頬を指先で突いた。
「…そうでしょうか?」
「え?」
「大佐は…私のことなんて好きなっていないかもしれませんよ」
口には出さないけれど、背中に父が刻んだ陣や、大佐が焼いたあの傷がなければ、彼は今頃は私ではない別の女性を抱き締めていたかもしれない。
かもしれない、というより、そちらの可能性の方が高いだろう。
「中尉、せっかくいい雰囲気だったのに…『そうでしょうか?』って…ひどいな」
「だって本当にそう思うんです。もし別の出会い方をしていたら、大佐は私に興味すら抱かないかもしれません」
「そんなことないぞ。今まで仕事より女性と楽しく遊んだ時間の方が多い東方の美男子がこの歳になってやっと落ち着いて、今や中尉しか目に入らん。…こんなことを言うから、私って信用ないのか?」
「いいえ。…多分、私がひねくれているだけです」
「うん、そうだよな」
大佐はそう言うと私が頭の上から被っていたブランケットをばさりと勢いよく床に落とした。
「大佐?」
「せっかく中尉が『好き』って嬉しいことを言ってくれたんだから、愛を確かめ合いたい」
そう言うと同時に大佐の手がパジャマの中にもぐり込んできて、思わず焦ってしまう。
手慣れた様子で素肌を撫でる大佐は冗談には見えず、どうやら本気のようだ。
「それから、ひねくれ者の中尉に、どんなに私が君を愛しているか分からせてやる」
「…え?待ってください…ここで、ですか?ここは神聖な書斎じゃ…」
大佐の指が胸の形をなぞるくすぐったさに耐えつつ、突然の展開に頭を混乱させながら彼に問い掛ける。
「神聖な場所でするって…燃えるじゃないか」
「そういう問題じゃなくて…」
パジャマのボタンを外し出した大佐から何とか離れようとするが、彼の太い腕はがっしりと私の腰に回されており、私に逃げ場はなかった。

「…リザ、ちゃんと動いて」
大佐の膝の上に跨がったままぐったりと動かなくなった私に意地悪をするように、彼は下からトンと私を突き上げた。
「…ふ…ぁ…っ!」
奥深くまで大佐を飲み込み、体を突き刺されるような強い快楽に耐えられず高い声で叫ぶ。
堪らず首をのけ反らせると、額や髪から汗が飛び散った。
「…もう動けない?」
肩で大きく息をしながら大佐の裸の胸に寄り掛かり、必死に首を縦に振る。
大佐の膝を跨ぐ両足は大佐を飲み込む度にがくがくと震え、力が入らず、もう思うように動いてくれない。
「…じゃあ…」
「ん…っ!」
大佐は、服を纏わない私の裸の体をしっかりと支えながら椅子から立ち上がり、汗ばんだ背中を机の上に横たえた。
大佐が少し動くだけで私のお腹に埋まった彼のものが動き、その刺激に思わず声をもらしてしまう。
「背中、痛くない?」
大佐と繋がった部分が溶けてなくなってしまいそうなほど熱いと感じながら、緩慢な動作で頷く。
先ほどはとても寒かったのに、それが嘘のように、今は風邪をひいた時のように体の芯から熱に侵されている。
「…大佐…っ」
大佐が私の腰を掴んで再び動き出す。
また甘い痺れが体に走り抜け、何か縋るものを求めて手を宙にさ迷わせると、大佐がその手を握ってくれた。
「…あ…っ、や…!」
黒い前髪の間から切れ長の瞳で私を見つめる大佐の背後に、分厚い本がたくさん詰まった本棚があるのが見えて、思わず目をつぶる。
大佐がいつも研究や本を読む場所で、こんな行為をするなんて消えてしまいたいほど恥ずかしい。
背中には大佐がメモを残した紙が張り付き、その感覚から逃れようとするが、羞恥を煽るように卑猥な水音が部屋中に鳴り響く。
「…大佐…っ…だめ…!」
「…リザ…すごく綺麗だ…」
「…たい、さ…」
喉に軽く歯を立てられ背をのけ反らせる。
こんな場所で行為に及ぶなんて消えてしまいたいほど恥ずかしいけれど、大佐の満足そうな声を聞いて、羞恥心が少し薄まる。
大佐が望んでいるなら、それでいいの。
なかなか素直になれず、いつも意地を張っている私が、体や心に入り込むことを許し、すべてをさらけ出せる相手はあなただけ。
「…大佐…っ、大佐…!」
大佐の手をぎゅっと強く握りながら、熱に浮かされたように何度も彼の名を呼ぶ。
体の奥の深い部分で大佐を感じるのを愛おしく思いながら、彼にとって、私も少しでもそんな人間になれればいいと願った。

「…机って…案外広いんですね…」
大佐が行為後の処理をしている間、私は体を丸く縮こめて机の上に寝ていた。
「まあね」
大佐は裸の私の上にパジャマを羽織らせると、また椅子に座り膝の上に私を抱き寄せる。
「…リザは本当にひねくれ者だよ。少しは私のことを信じてくれないかな」
「…んー…」
「『んー』じゃなくて…おい、リザ」
もともと眠かった上に恥ずかしくて疲れることをしたため、一気に眠気が襲ってくる。
「こら、寝るな」
「…やだ…」
大佐は不満げに私の頬を指で摘んで軽く引っ張った。
「…私はさ、リザの背中のことがなくても…君を好きになっていたよ。しがらみがなくても側にいたい。リザこそ…私に背中を焼かせた罪悪感から、無理して私とこうして一緒にいるんじゃないか?」
違う、と首を振りたいけれど、そんな気力はもう残っていなかった。
大好きな大佐の温かさと匂いに包まれて安心し、瞼がだんだんと重くなる。
「どんな出会い方をしても、リザがどこで何をしていても…私は必ずリザを好きになるよ」
大佐の言葉の意味は眠気のために理解できなかったが、彼の声は子守歌のように穏やかで心が安らぐ。
大佐の腕に抱かれ、私は安寧を感じながら、私はとうとう眠りの世界へと落ちていった。
「…寝たのか。…本当に、リザ以上に私を悩ませる女性はいないな。私がこんなに手を焼く人はこの世に一人しかいないよ、リザ」
大佐が苦笑しながらため息交じりに呟いた言葉は、もちろん私の耳には届かない。




 


犬の部屋にあるベッドは広いとは言えないけれど、二人で抱き合って寝転がればそこはもう天国で、大きさなんて関係ない。
今日も一日、私のうしろについてきて、私をしっかりと守ってくれてありがとう。
よくできました。
毛並みが乱れるほど頭を撫でてやると、犬が嬉しそうに目を細めて笑う。
犬が白い歯を見せて笑うなんて、司令部では滅多にないことだ。
私だけが知る犬の可愛い笑顔。
犬がご主人様である私に褒められるのが何よりも嬉しいことは、主人である私が一番よく分かっている。
犬を目一杯褒めてやりたくて、頭を撫でて、毛並みのいい体を抱き締めて、頬に口付けをする。
口付けをされると途端に真っ赤になる頬が可愛らしくて、犬の真似をしてそこに軽く噛み付いてみる。
少し歯の痕が残ったけれど、犬は気にせずに相変わらずにこにこしている。
もっと撫でて。
犬は何も言わないけれど、私のことをじっと見つめる茶色い瞳がそう訴えているのは、主人だからもちろんお見通しだ。
ぱたぱたと尻尾を忙しく振って喜ぶ犬が、私に甘えてくる犬が、可愛くてしかたがない。
だから、ついつい先ほど似合うと褒めたばかりの花柄のブラウスの中に手を伸ばしてしまう。
茶色い目を丸くして驚く犬。
たくさんお喋りをして、何度も口付けをして、もっと笑っていたのだけれど、犬が愛らしいためにすぐに抱きたくなってしまう。
ムード作りは得意中の得意だけれど、犬の前ではムードなんて作っている暇がない。
犬はいつも無意識に私を誘う。
桃色の唇をこじ開けて舌を絡ませながら、少々乱暴にブラウスもスカートも脱がせて、犬を本来の姿である裸にしてしまう。
犬は私の下で頼りなさげに身を縮こめた。
犬は、犬のくせに裸を見られることが恥ずかしくて堪らないらしい。
「大佐以外の方になら裸を見られても構わないと思うのに、あなたの前ではどうしても恥ずかしいのです」
犬は前にこんな不思議なことを言っていた。
魅力のたくさん詰まった犬の金の体をほかの人間に見せるものか。
犬が身をよじる度にふるふると揺れる胸に口付けて、舐めて、吸い上げて、唾液でべとべとにする。
「…ん…っ」
犬は豊かな胸を大きく上下させて、唇をきゅっと閉じて、鳴いてしまうのを苦しそうに我慢していた。
犬はこの行為自体があまり好きではないらしいのだが、いつも私のためにぎゅっと目を閉じて我慢をしてくれている。
犬はご主人様の要望は絶対に叶えてくれる。
その従順さと健気さが愛おしくて、犬の体を撫で回す指に自然と力が入る。
「…大佐…っ」
犬の女の部分を舌で舐めていると、いつもの犬らしくない甘い声が聞こえてきて、うっとりと酔いしれる。
我慢なんてしなくていいから、もっと気持ち良くなって。
恥ずかしくなんてないから、もっと私に全部を見せておくれ。
「あぁ…っ!」
ちゅっと音を立てて小さな敏感な突起を吸い上げると、犬の耳も尻尾もぴんと真っすぐに伸びたかと思えば、すぐにぐったりと力無く垂れてしまった。
犬の心は羞恥でいっぱいだろうけれど、シーツに沈み込んだ金の体はきっと満足している。
犬なのに「鷹の眼」と呼ばれている目は眠たそうにとろんと下がり、茶色い瞳は涙で潤んでいた。
頬を伝う涙を指で拭ってやりながら、頑張ってくれた犬のふわふわの体を強くぎゅっと抱き締めた。
「…こんな格好を…するんですか?」
ベッドの上で四つん這いになった犬が、不安そうに私の方へ振り返る。
「なんだか犬みたいで…恥ずかしいです」
だって君は犬じゃないか。
大丈夫、取って喰ったりなんてしないよ。
私は今までいろんな女性と付き合って、そりゃあもうたくさんのことをしてきたから、絶対に痛くもしないから。
安心させるように言ったのだが、犬は黙ってしまって少しだけ寂しそうな顔をする。
嫉妬しているの?
そう聞くと、「会ったこともない方を嫌いになるのはとても嫌ですが、そうなのかもしれません」と真面目な犬の答え。
馬鹿だなあ。
私には犬しかいないんだよ。
確かに昔はたくさん遊んだけれど、犬の体を隅々までを知ってしまった今は、もう君の毛並みの良さから離れられない。
ベッドの上で、妖艶で大胆な女性が犬には考えもつかないようなことを経験させてくれたけれど、もうそんなことに魅力は感じない。
恥ずかしがりでなかなか素直になれないけれど、そんな犬の方がとっても素敵だよ。
犬が照れて赤くなった顔は今まで抱いたどんな女性よりも可愛くて、食べたいほど愛おしい。
それから、私以外にそんな姿は見せないでおくれと、初めて犬に独占欲を持ったんだ。
犬だって、私しかいないだろう?
今まで色んな女性と付き合ってきたけれど、犬ほど私のことを思って、考え、気遣って、愛して、背中についてきてくれるひとはいなかった。
仕事が終わったというのに、危険が迫れば女性だというのに勇敢に私の前に立ちはざかってくれる。
指のささくれのことも、本を読み始めると生活がだらしなくなることも、悪夢にうなされて目覚めることも、何でも心配してくれる。
私にそこまで尽くしていて犬は疲れないのかい?
私にこれほどまで忠誠心を示して感動させてくれるのは、犬しかいない。
真面目で、正直で、恥ずかしがり屋で、でも実は甘えるのが大好きな犬を愛しているんだ。
だからそんな顔をしないでほしい。
「…んう…っ」
狭い犬の中に入り込むと、少しだけ苦しそうに犬が鳴く。
犬の背中に覆いかぶさって耳元で大丈夫かと聞くと、くすぐったいのか耳をぴんと尖らせた犬がこくこくと頷く。
「いつもと違うので…不思議です…っ」
不規則に呼吸を乱しながら、犬が戸惑い気味に言う。
「いつもより…すごく深いんです…奥まで…」
ああ、なんて犬は正直者なんだろう。
いつもは性的なことを感じさせないほど清らかな犬が、知らないうちに卑猥なことを口にしている。
「…んんっ!」
興奮を抑え切れずに激しく突き上げると、刺激が強すぎたのか犬の二本の腕ががくりと折れてしまった。
犬はシーツをぎゅっと握ってそこを支えにし、揺さ振られる動きに耐えていた。
「…あ…大佐…っ!」
犬が白い尻を高く掲げ、そこで私たちは繋がっている。
なんて淫らなんだろう。
犬の背中に覆いかぶさったままふさふさの毛並みに顔を埋め、シーツと体の間に手を差し込んで柔らかな胸を揉む。
「…大佐…っ!たい、さぁ…!」
熱にうなされたように犬が何度も何度も私のことだけを呼ぶ。
熱い犬の中に入って包まれているのが気持ち良くて、犬が何度も名を呼ぶのが嬉しくて、ずっとこうしていたくなる。
もうすぐ終わりなのが悲しいくらい幸せだ。
「あ…っ!…た、いさ…たいさっ!」
シーツに頬を強く埋めた犬が一際高い声で鳴くと、私のものをぎゅっときつく締め付ける。
犬の中からずるりと己を抜いて、犬の尻尾に欲望を放った。
「…は…っ…大佐…」
肩を大きく上下させ、まだ呼吸を整えている犬の体を、きつくきつく抱き締める。
お互いの汗や体液が混じり合って肌がべとべとになるけれど、それもまた心地良い。
熱い素肌を隙間なく寄せ合って、私と犬はしばらくお互いの鼓動の音だけを感じていた。
「…大佐…あの、気持ち良かったですか?」
しばしの沈黙のあと、少しだけ不安そうに尋ねる犬。
恥ずかしくてたまらないことを要求されたのに、まず最初に主人の気分の良し悪しを聞くだなんてさすがは犬だ。
とっても良かったと告げると、犬は唾液に濡れた口元を安心したように緩める。
私の腕の中で耳を誇らしげにピンと立てて、尻尾を振って喜ぶ犬は世界で一番可愛い。
犬の汗ばんだ顔中に口付けてもまだ足りなくて、可愛がるのに忙しい。
犬がくすぐったさそうに笑うのを見ると、自然と笑みがこぼれる。
犬が喜べば私も嬉しいし、反対に私が嬉しければ犬も喜ぶのだ。
ほら、私には犬しかいなくて、犬には私しかいないんだから、やっぱりこの小さなベッドの上は天国だ。




 


※最終回後の話です


ベッドヘッドに寄り掛かって本を読んでいると、「また本を読んでいるんですね」と、少しだけ声に不満さをあらわにして、リザが寝室に入って来た。
確かに自分からリザを家に招いておいて、もてなしもせずに一人で本を楽しんでいるのは彼女に失礼か。
しかし、付き合いが長いという言葉だけでは説明できないくらいたくさんのものを共有して分かち合っている私達は、そんなことぐらいでは喧嘩にはならない。
リザだって、つい先ほどまでは、リビングの床に散らかった私のシャツや紙の束などを、頼みもしないのに勝手に一人で掃除をしていたのだ。
私達は、そんな遠慮のない仲だ。
寂しくなったの?
本を投げ捨てながらそう聞くと、リザは肯定はしないが否定もしないで、黙ったままベッドに腰掛けた。
おいでと腕を伸ばすと、リザは少しだけ恥ずかしそうに、しかし素直に私の膝の上に座る。
あの子が初めてお手をしたんです。
あの子ってどの子?
あの子はあの子です。
ブラックハヤテ号の子供はみんな同じに見えるんだけどな。
目の上の白い部分がみんなより大きい子ですよ。
ふと、お喋りが止まると、どちらともなく口付けた。
唾液が溢れるのも構わずに貪って、お互いに服を脱がせ合って、それから気持ちの良いところを触り合う。
すっかり熱を持った体はリザを求めていて、もちろんそれは彼女も同じで、彼女はゆっくりと腰を落として私を飲み込んだ。
リザの脚が私の体を跨ぎ、丸い尻を膝の上にぺたりと乗せて、彼女がゆっくりと前後に動き出す。
最高に上手だとは言えないけれど、初めて私の上に乗っかって交わった時よりも、うんと上達した腰使いに惚れ惚れとする。
リザと体の関係を持ち始めていろいろと冒険をしていた頃は、彼女は「痛い」だとか「下手でごめんなさい」だとか、よく目元を赤くして落ち込んでいたことを思い出す。
初々しいリザも可愛いけれど、恥ずかしさを堪えて真面目に挑戦を繰り返して、見事にコツを掴んだ彼女もまた愛おしい。
再び深い口付けを交わしながら、リザがリズミカルに奏でる水音に酔いしれる。
リザの甘く震えた吐息が唇にすぐ当たり、それだけで背中がぞくぞくとする。
私の首に腕を回し、うっとりと目を閉じて一生懸命に動いていたリザが、ふと、そっと目を開けた。
電気を点けっぱなしにしていることを指摘されるのかと思ったのだが、リザは茶色い瞳でじっと私のことを見つめてきた。
そして、リザは急に腰の動きを止めるのと同時に、口元を緩めてにこりと笑った。
これは、リザが何か楽しいことを思い付いた時の顔だ。
リザは私の首から両腕を離すと、うしろに撫で付けている私の前髪に触れた。
「あ」
いつもリザが整えてくれているオールバックにしている前髪を、彼女自身がぐしゃぐしゃに乱して元に戻ってしまった。
目の前に黒い髪がぱさりと落ちてくる。
今日は一段ときまっていてかっこよく、気に入っていたのに、崩されてしまった。
うふふ、と、リザは嬉しそうに、私の元に戻った前髪を指で梳かした。
「昔みたいです。こうすると、やっぱり童顔ですよ」
「……君にだけは童顔なんて言われたくないんだが」
無垢な少女のような笑みを浮かべて、何が童顔だ。
ずいぶんと長い間、リザと同じ歳月を過ごし、私にはとうとう目元に皺ができたというのに、彼女の容姿は昔のままで変わらず、年を取っているように見えないのだ。
まるで、リザだけ時計の針が止まっているようだ。
ショートヘアの今のリザの姿は、彼女を副官にしようと決めた頃を思い出す。
リザに背中を任せる約束をした時からもうずいぶんと時間が経ち、私達は階級も上がり、大総統への道がより近くなったところなのだが、彼女はいつまでも同じ姿で私のうしろを歩いている。
「痛いです」
リザの頬を軽く摘むと、昔と変わらない弾力が指先に伝わる。
今まで、知り合いに散々、童顔だとからかわれてきたが、私の目元に皺ができてからは万場一致で、童顔の座をリザに明け渡した。
あのエルリック兄弟達までも、リザが彼らと出会った頃と変化のない姿で働いている様子を見て、不老不死だとかホムンクルスだとか冗談を言うのだ。
「…何で君は老けないんだ?」
「知りませんよ…。威厳がないので困ります…」
こうやって唇を尖らせる仕草なんかも、出会った頃と少しも変わらなくて驚いてしまう。
リザは軍に在籍してもう長くなるのに、新入りの士官達には、自分達とそう年が変わらないと思われているようで、「年上のお姉さん」として大人気だ。
リザを昔から知る者も、「いつまでも変わらないリザ・ホークアイ」として、未だに彼らは彼女に憧れている。
リザは私に何も言わないが、新入りから年寄りまであらゆる年代の男達から付き合ってほしいと告白されているのを、私はちゃんと知っている。
リザはいつまで経っても軍のアイドルで、男共を脅したり威嚇したりで私は大変だ。
それから、リザと一緒に街を歩いていると、時々痛い視線を感じることがある。
それは私達が美男美女の恋人同士だからではなく、認めたくはないが、おじさんが少女を連れて歩いているように見えるからだろう。
私とリザとそこまで年が離れているわけではないのに、街行く人から「ロリコンだわ」なんて囁くひどい声も聞こえるのだ。
リザの容姿が昔とちっとも変わらないために、私は困ってばかりだ。
「…あなたは、すごく威厳が出ましたね…」
私が悩んでいることなど露知らず、リザは指先で愛おしそうに私の目元にある皺に触れると、そこに口付けた。
リザはこの皺を大変気に入っていて、何だか毎日彼女に口付けられている気がする。
「でも、やっぱり前髪があると若く見えますよ」
子供のような無邪気な目をして私の前髪に触れ、楽しそうにくすくすと笑うリザが可愛くて、つい無意識のうちにリザの腰を掴んでしまう。
「…あ、は…っ!」
我慢できずにリザの腰を両手で掴んで下から強く突き上げると、彼女はぎゅっと目を閉じ、白い体がびくりと跳ねた。
「ああ、ごめん、つい。でもお喋りはもうおしまいだ」
余裕がないのをリザに悟られたくなくて、何か言いたそうな彼女の唇を急いで塞いでしまう。
「…ほら、リザが動かないと」
唾液で濡れた唇から悩ましげな吐息をこぼすリザは、私に促されるまま、再び私の首に腕を回して動き出す。
「…ん…う…っ」
声を抑えて一生懸命に腰を振るリザの様子に、目を細めて魅入る。
色素の薄い髪も、つり目気味でくりくりと丸い大きな瞳も、ふっくらとした頬も、形の良い唇も、昔からずっと変わらない。
どこもかしこも私の指が沈み込む柔らかな体もそうだ。
逞しい肩も、重たそうに揺れる豊かな乳房も、引き締まった腹も、肉付きのよい太ももも、もうずっと私を虜にして離さない。
「…マスタングさん…っ!」
リザはきゅうっと私のものを締め付けると、高い声で私の名を叫んだ。
頬を熱で赤く染め、目尻を涙で濡らし、昔からの呼び名で呼ばれると、リザの姿が若いままずっと変わらないどころか、彼女が幼く見える。
十代のリザを抱いているような実に不思議な気分だ。
「リザ」
呼吸を荒くして、ぐったりと私の胸に寄り掛かってきたリザの汗ばんだ体を抱き締め、彼女と繋がったまま、彼女をシーツの上に押し倒す。
リザはぼんやりとした瞳で不思議そうに私を見上げた。
「…マスタングさん…?」
「一人で腰振って、一人でイっちゃったのか」
「…そ…んな…」
リザは恥ずかしさのあまり涙の浮かんでいる目をさらに潤ませ、唇を噛む。
リザを初めて抱いた時も、彼女は恥ずかしいことがあると唇を噛んでいた。
おかげで、嫌がる幼いリザを強引に組み敷いて、泣きじゃくる彼女を無理やり抱いているという危ない妄想を抱いてしまう。
一緒に同じ時を歩んで、いろんな経験を詰んだり、辛い出来事を乗り越えたりしながら年を取っているはずなのに、リザのその姿は若いまま。
昔と変わらぬ容姿でいて、いつまでもあどけない表情や仕草を見せてくれるリザがあまりにも可愛すぎる。
私はすっかりおじさんになったが、リザはまだ少女のようにも見えて、こうして彼女の一挙一動に喜びながら彼女を押し倒している様子は、私達の年齢を知らない者はやはり私をロリコンと思うのだろうか。
もうロリコンと呼ばれても構わないかもしれない。
もちろん、リザ限定で。
「…マ、マスタングさんっ!?」
リザのしなやかな脚を片方だけ肩に担ぐと、彼女は目を丸くした。
「私はまだイってないから」
「…やだ…待ってください!」
「無理」
「…駄目です…っ!駄目…!」
リザがやめてと言うのも聞かずに容赦なく腰を動かすと、彼女は今にも泣きそうな顔をして喘ぐ。
達したばかりの敏感な体にまた刺激を与えられるのは、昔からリザが苦手なことのひとつだ。
「…かなり昔、私は魅惑の遊び人とか東方の色男とか呼ばれていたけど」
「…あっ、あ…!」
「今は、君が魔性の女と呼ばれるべきだな」
「…動いちゃやだ…!」
「私はもうずっと前から、すっかり魔性の女に夢中だよ、リザ」
魅惑の遊び人、またの名を東方の色男は、ある日を境にすっかり大人しくなったと言われているが、それはリザが側にいてくれるようになったから。
その時からリザの愛くるしい姿に惑わされてきて、未だに彼女に骨抜きにされている。
「リザ、聞いてるか?」
「…だめ…!」
リザは私の背中に腕を回して必死に抱き着きながら、訳が分からないといったように首を振る。
「…マスタングさん…っ」
涙交じりの声と、少し苦しそうに眉をぎゅっと寄せて、潤んだ茶色い瞳に私だけを映すリザが愛おしい。
「苦しい?」
「…当たり前…です…っ」
「嫌いになった?」
「…大嫌い…!」
息を切らして辛そうにそう叫びながらも、リザは私の背中に回した腕に力を込める。
私に意地悪をされているのに、結局は私を許して縋りついてくるのも、昔から変わらないリザが私に甘いところのひとつ。
リザの優しさに甘えて、彼女に気遣えそうもないことを自覚しながら、彼女を貫くように突き上げる動きを再開する。
「リザ」
「…あ…マスタングさん…っ」
辛そうに眉を寄せていた顔から力が抜け、だんだんと甘くなってきた声で何度も私の名を呼ぶリザの様子に目を細める。
私のようにリザに皺ができても、これからも、彼女の姿や仕草、何より存在に魅了されて、きっとますます手放せない。




 


ソファーに座る女が当たり前のように差し出した長く白い脚を、床に跪く私も当たり前のように手に取る。
柔らかな金髪をひとつ結い、綺麗に化粧を施し、ドレスを身に纏う女は、リザ・ホークアイの姿をしているけれど今は、「エリザベス」だ。
「エリザベス」は飲み屋で働く女、そして私は「ロイさん」と呼ばれ、彼女に入れ込む客を演じている。
私よりも一回り小さなエリザベスの足を、壊れ物でも扱うように大切に手の中に収め、爪にマニキュアを塗っていく。
筆をゆっくり動かすと、綺麗な形をした爪が、エリザベスの口紅がひかれた唇と同じ赤に染まっていく。
少しでも爪からマニキュアがはみ出すと、エリザベスは組んでいた脚をほどき、片方の脚を持ち上げ「いけない子」とつま先で私の顎を突く。
マニキュア特有の鼻につく匂いがリビングに充満する。
丁寧にマニキュアを塗る振りをしながら、脚を組むエリザベスの、ドレスの奥に隠れた内股を見ようと密かに視線がさ迷う。
「…ねえ」
沈黙が続いていた静かな空間を、エリザベスの笑いを含んだ声が破る。
「ロイさんったら、とってもいやらしいのね」
「え?」
エリザベスの言っていることが理解できず首を傾げると、彼女が脚を組み直した。
目の前で、ドレスのスリットが大きく開き、白く肉付きの良い太ももが大胆にもあらわになる。
「ほら、見てる」
「…そんなことは…」
「そうかしら?」
組んでいた脚を元に戻すと、エリザベスはマニキュアが乾きかけている足で、急にベルトに触れた。
そして感触を確かめるようにゆっくりと足を下げていき、スーツのズボンの上から雄の部分に足の裏を押し付ける。
「エリザベス!?」
「…ここ…とっても熱いわよ?」
口紅で艶めく唇でにこりと弧を描き、エリザベスは容赦なく踏み潰すように足でジッパーの上を押してくる。
「…っ…」
「やだ、また熱くなってきた」
エリザベスに口や指で愛撫をされたことはあるが、物でも扱うかのようにここに触れられたことは、今まで一度もない。
自然と息が荒くなっている自分に気が付いた。
認めたくないが、エリザベスの私を見下すような、蔑むようなこの遊びに、私は興奮していた。
「ロイさん」
「…なんだ」
「服、脱がないの?このままだとぐちゃぐちゃになるわよ?私は構わないけど」
ズボンの上からエリザベスが足の指を擦り付ける動きは止まらず、私は情けないことに冷静な顔を保ち、普通の声を出すのが精一杯だ。
「……それとも、やめる?」
そう言うとエリザベスが急に足を離し、緩慢な動きでまた脚を組んだ。
急に刺激がなくなり、火のついた体は安堵ではなく焦燥感に襲われた。
一度目を閉じて深呼吸をする。
目を開けると、すぐにベルトに手を掛けた。
この熱をやり過ごすことなどできない。
エリザベスにすぐに触れてほしい。
エリザベスに遊ばれても構わないと決心してしまったために、ベルトをズボンを取り払う手は早い。
少し戸惑ったが下着もすぐに脱いで、畳まずにぐしゃぐしゃに置いたズボンの上に放り投げる。
エリザベスは、私が服を脱ぐ様子を、膝の上に肘をつき、人差し指を唇にくわえて楽しそうに眺めていた。
そんな視線すら興奮材料に変わり、また呼吸が乱れる。
「床の上に座って、足を開いて…ロイさん」
「ロイさん」は飲み屋で働く女である「エリザベス」を気に入っている、遊び好きだが紳士な男のはずだ。
しかし今は、女が男に愛撫をされる時のように尻を床につけ、膝頭をそっと離している。
「…そう、いい子ね」
満足そうに言い、エリザベスは優しい笑みを浮かべた。
エリザベスはソファーに両手をつくと、そこを支えにして、再び私の内股の間に足を伸ばした。
エリザベスの足の親指が直に雄の塊に触れ、背筋が痺れる。
エリザベスの白くきめ細やかな肌をした足が、根本から先端までを丁寧に、何度も行き来する。
普通ならば愛撫に使われることのない足で触れられている倒錯感はあまりに刺激的で、雄の象徴はすぐに形を持って固くなる。
ドレスのスリットからは雪のように白い脚が無防備に顔を出し、ますます体の中心が熱を持つ。
声を出さぬよう唇を噛むが、眉を寄せてしまうのは止められない。
もう冷静な顔などできない。
「だらしないわね」
エリザベスの私を嘲笑う声、見下した瞳に背中がぞくりと疼いた。
足で愛撫することに慣れてきたのか、エリザベスが足の裏を私に擦り付ける動きが早くなる。
リザ・ホークアイならば絶対にこんな声は出さない、こんな瞳で見ない、こんなことはしない。
リザは私の副官で、恋人で、年下で、昔から見てきたせいか父親のような気持ちも抱いている。
そして、恋愛に不器用なリザをリードするのは、いつも男性である私だ。
いつも私に付き従い、情事に疎いそんなリザに、おもちゃのように遊ばれている事実に頭がかあっと熱を持ち、射精感がぐっと高まる。
いつも女性を組み敷き、満足させ鳴かせてきた私が、こんな屈辱的な仕打ちをうけたことはない。
「…ねえ、ほかの女のことを考えていたでしょう?」
「…エリザベス…っ!」
少し不機嫌そうに、でも余裕たっぷりの笑みを浮かべ、エリザベスは根本をさすっていた足を茂みの奥深くへともぐり込ませた。
そしてもう片方の足は、親指で先端をわざとくちゅくちゅと水音を立てていじる。
勝手に腰が前後に動いてしまうのを見て、エリザベスは「我慢しなさい」という視線を向けてきた。
「私のことだけを考えて…なんて、言わせないでちょうだい、ロイさん」
白い足の甲は、私から溢れた液でべとべとに汚れていて卑猥だ。
エリザベスは初めてとは思えないほど器用に、的確に私の弱いところを責める。
筋が浮かぶところ、私の息が上がるところに、五本の長さの違う柔らかな指をぎゅうぎゅうと押し付けられる。
「……エリ、ザベス…!…もう…!」
「やだ、もう?」
達するにはあまりにも早すぎるが、いつも女性の前で優位に立っていた自分の淫らさを嘲笑われている事実と、エリザベスという女性に足で愛撫されている現実が、背中を震わせ、限界が近い。
「どうしようかしら?」
私が顔を歪めて愛撫に耐える様子を穴が開きそうなほどじっと眺めていたくせに、エリザベスはふと視線を逸らした。
そして足の動きを揺るかなものへ変える。
「…エリザベス…」
「私は何をすればいいのかしら?ちゃんと言ってくれないと分からないわ。……いい子にはご褒美をあげる、ね?」
絶頂がすぐそこに見えているのに、エリザベスは親指で先端の上でくるくると円を描くだけで、達するほどの刺激を与えてくれない。
あまりの物足りなさから、いっそ自分の手で好きなように扱いてしまいそうだ。
こめかみに浮かんだ汗が頬に伝う。
――エリザベスの足で、イきたい
「…擦って…」
「なあに?聞こえないわ」
「…君の足で、私のここを…強く擦ってくれ…」
「…うーん、不合格だけど…まあいいわ。今日は特別ね」
エリザベスが屈み、顔をぐっと近付け、唇から甘い吐息を私に振り掛けた。
「してあげる」
エリザベスは再びソファーにもたれ掛かると、両方の足の裏で熱い猛りを強く挟んだ。
そして水音がするほど上下に激しく動かし、私の望み通り強く扱く。
濁った液で汚れる白く小さな足、ドレスを割って現れた揺れる太ももの肉、頬を赤くして恍惚と私を見るエリザベスの表情、足の裏のすべらかな肌、エリザベスがかすかにもらす吐息。
いろんな情報が頭を一気に駆け巡り、目の前が一瞬歪んだあと、腰がぶるりと震えた。
「…――う…っ!」
前に少し屈み込み、みっともなく声を出して熱い欲望を放出した。
いつもより長い射精に頭が真っ白になる。
「……あーあ、汚れちゃったわ」
エリザベスの心底呆れたような声で、はっと我に返った。
下半身は何も身につけていないが、上半身はネクタイをしてしっかりシーツを着込んでいるため、汗でぐっしょりしている。
肩を大きく揺らして息をしながら視線を下へ向けると、白濁とした液でエリザベスの綺麗な足が汚れていた。
簡単に足でイかされた背徳感を覚えつつ、足に白い液が伝う光景を見て、心のどこかで満足していた。
「せっかくロイさんにマニキュアを塗ってもらったのに」
「…すまない…」
「舐めて綺麗にして」
「…エ、エリザベス…」
「ふふ、冗談よ」
いつものように艶っぽく笑いながら、しかし細めた目で射るように私を見るエリザベスの言葉は、とても冗談には聞こえなかった。
「…それより」
「…ちょ…っ!」
エリザベスはどろどろに汚れた足の指で、まだ少し固い雄を突いた。
「…まだ足りないようね。脚を綺麗にしたら、今度はベッドで可愛がってあげるわ、ロイさん」




 


気のおけない部下達を取られ、副官を大総統に人質にとられ、自分の行動の軽率さを悔やみ続けてどれくらいたっただろうか。
念願の中央勤務だというのに味気のない仕事を終えて家に戻り、帰る途中で買った惣菜で適当に食事をすませる。
ベッドに背中から勢いよく倒れ込み、仰向けになって、ぼうっと天井を見上げた。
先ほどちらりと目にしたカレンダーの日付を見て、まだまだ遠いとため息をつく。
今までカレンダーに記された数字など気にしたことなどないのに、ここ最近は毎日見ている。
副官に、リザ・ホークアイに、会いたい。
同じ敷地にいるのだから、会おうと思えば会える。
今日も食堂で一緒に昼食を食べた。
暗号を使って会話を交わし、「私は無事だ」と告げ、リザも「心配はいりません」と教えてくれた。
リザの顔と手首の傷はすっかり薄くなり、彼女の言う通り本当に無事なのだろう。
でもあの傷は何なんだ?
リザに何があった?
何をされた?
誰がした?
私がリザに起こったことについて知らないなんて、今までないに等しかった。
早く問い詰めて、傷痕を舐めてやって、それからリザが泣いてでもはかせて、傷を付けた相手を跡形もなく燃やしてやりたい。
リザと人目を気にすることなく、話したい。
一緒に帰宅し、夕食を食べ、何気ない話で笑って、風呂上がりの体を愛撫して、ベッドで抱き合って穏やかに眠りたい。
口うるさくも頼れる部下達と、いつも私を守り支えてくれたリザがいてくれた生活が懐かしい。
リザを壊れそうなほど強く抱き締めたい。
リザに唾液が溢れるのも構わず口付けたい。
ぐちゃぐちゃになるほど、溶け合うほど、涙と涙を擦り合わせて抱きたい。
あの白い体を、リザを、何度も貫きたい。
――リザに、触ってほしい
あの柔らかな指で触ってほしい。
私よりも細い腕を首に絡めて、汗ばんだ髪を首筋にこすりつけて、脚を腰に絡めてほしい。
私の下で泣きながら甘く鳴いてほしい。
いつも夜になると抱く劣情を、本でも読んでごまかそうとしたが、リザの媚態を思い出すと文字を追う気は失せた。
ここのままでは眠れもしない。
ベッドからゆっくりと起き上がり、ベッドヘッドに背中を預けた。
ベルトを外し、ズボンと下着を脱ぐ動きは素早く、手慣れたものだ。
服を適当にシーツの上に放り投げ、すでに熱を持ち始めている自身に苦笑しながら、手で触れる。
どのように手を動かせば気持ち良く、時間も掛からずすぐに達することができるかは、よく知っている。
しかし扱くのではなく、わざと指の先で熱い塊を焦らすようになぞることから始めた。
リザがいつもそうするように、控え目に指で自身に触れる。
――触っても、いいですか…?
――ああ、いいよ
目を閉じて、瞼の裏に、いつも必ずリザが上目遣いで私に尋ねてくる姿を思い浮かべる。
自身の形を指でなぞったあとは、リザの動きを真似て、恐る恐る五本の指を絡ませる。
私の手は彼女の指のように細くないし、しっとりとした肌でもないが、想像力を働かせてあの愛おしい指の感触を思い出す。
――どうすればいいですか…?
――好きにしてくれていいよ
いつもリザは壊れ物でも扱うかのように、そっと自身を手で包み、ただ上下に動かすだけで、優しすぎる刺激しか与えてくれない。
しかし、本当は私のモノを見ることすら恥ずかしいのに、触れて、舐めて、口に銜えて、羞恥を押し殺して私を気持ち良くさせようとするリザが愛おしくてならない。
――気持ちいいですか?
――うん、いいよ
自身に丁寧に触れるリザを思い出しながら、今日、食堂で会った彼女のことも思い浮かべる。
リザは少し疲れているようだったが、相変わらず頭からつま先まで美しかった。
いつも冷静なリザが軍服の下に白く柔らかな肉体を隠し、髪を乱し、涙を流して甘く喘ぐことを私は知っている。
ああ、あのすました顔にぶっかけてしまいたい。
リザの動きを模して緩やかな刺激だけを施しているのに、自身はすっかりと熱を持ち、先端には先走りが滲んでいる。
――舐めても…いいですか?
――どうぞ
リザの桃色の舌がちろちろと舐めるのを想像しながら、先端の上を、親指で円を描くように回して愛撫する。
――苦いだろう?無理しなくていい。
――平気、です…
涙目になってでも、小さな唇が私の大きな塊を精一杯飲み込む姿を思い浮かべると、自身がびくりと動いた。
――や…っ、動いた…?
――ごめん
――いいえ…
リザは自身の愛撫に慣れてくると、根本を指を絡ませて扱きながら、先端を口に銜えて頭を動かす。
先端が熱い頬の肉に当たると、つい喉を鳴らしてしまう。
とても上手だとはいえないけれど、リザは、今まで抱いてきた女からは考えられない最高の快楽を与えてくれる。
あの鷹の眼と呼ばれるホークアイ中尉が、プライベートでは恥ずかしがりやのリザが、唇を濁った液で汚し、丸い胸を揺らして私の雄を愛撫してくれているのだ。
汗ばんで赤い頬、たまに上目遣いで私の様子を伺うのが、たまらない。
たまに歯が当たるのもいい。
リザはすぐに謝って、慌てて歯が当たった場所を舌でぺろぺろと舐めてくれる。
――本当に、気持ちいい…?
――大きさを見れば分かるだろう?
――意地悪…
白濁とした液で汚れた自身はすっかり勃ち上がって、腹に当たる。
気付けば体は汗ばみ、足なんかは汗が雫になり滴っている。
リザの裸体、指と口の動き、小さく紡がれる言葉を思い出しながら、彼女にはできない手慣れた動きで、水音を立てて激しく自身を扱く。
――リザまで気持ち良さそうだな…胸、尖っている
――んっ…や…触っちゃ駄目、です…
リザの柔らかな手、温かな口の中、熱い吐息、潤んだ瞳。
上下に指を早く動かしながら、リザが与えてくれる甘美な刺激を思い出す。
「…リザ…っ!もう…!」
『…ん、はい…分かりました…』
私が限界を訴えると、それに応じるリザの優しい声が、確かに聞こえた気がした。
リザの髪の毛を強く掴んでしまう汗ばんだ指、広げた足の間で動く白い体、いっそう強く吸い付く唇。
――どうぞ…
根本から先端まで強く握りしめて一気に扱いた。
「――は…っ…リザ、リザ…っ!」
ここにはいない愛する人の名前を叫びながら、頭が真っ白になる。
気付いた時には体が前屈みになり、手や足やシーツがどろどろに汚れていた。
――んー…。
眉を寄せて、私のものを何度も喉を鳴らして飲み込むリザが頭に勝手に浮かぶ。
――気持ち良かったですか…?
口の端に白い液をつけたまま、首を傾げ、心配そうに私に尋ねるリザを思い浮かべると、また自身が熱を持ちそうで彼女の幻想を慌てて消した。
深いため息がもれる。
溜まりすぎだ。
されに青臭いし、何より情けなさすぎる。
しかし、いつものことながらリザを思い浮かべながら自慰する時に感じる快楽は背徳感も相俟って気持ちが良い。
本物を抱けるのはいつだろう。
カレンダーのことを思い出すと考えるのは嫌になり、頭に浮かんだ数字を打ち消しながら、風呂場へ向かった。










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