※学園パラレルの話を置いてます

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あけましておめでとうございます  
お泊り会  


 


「あ、先生っ!」
化学準備室の扉を開けると古びた黒いソファーの上に裸の少女が丸まっていた。
部屋を間違えたか。
一度扉を閉める。
見慣れた扉に、その扉の上には「化学準備室」と書かれたプレート。
いやいや、やはり、ここはほかの化学の教師から分捕った私の部屋だぞ。
学校の部屋なのに私の部屋と化した一室だぞ。
深呼吸をし、もう一度扉を開ける。
「先生、どうしたんですか?」
ソファーの上にはやはり裸の美少女がいた。
しかもリザ・ホークアイ。
何故、皆が頼る優等生で真面目な君が学校内で裸なんだい?
軽く目眩を起こしそうになりながら準備室の扉に鍵を閉め、真っ白な肌を晒すリザを見る。
「…ホークアイ君、何をしているんだ」
「先生、今日は会議だったんですか?部屋に来たら先生いなくて…ずっと待ってたんです」
「いや…だからどうして裸なんだっ!鍵も閉めないで…!誰か来たらどうするつもりなんだ!キンブリーとかキンブリーとかキンブリーとかっ!」
「ここはマスタング先生以外誰も来ないですよ」
リザはソファーの前にある資料や本が積まれたテーブルの上に、制服をきっちりと畳んでいた。
もちろん下着も。
人間二人がやっと座れる狭いソファーにきっちりと収まるように、胸の前に折り曲げた膝を寄せ、リザはまるで猫のように丸くなっている。
華奢なくせに胸や太ももはふっくらとしている白い体。
これを私以外の誰かに見られたらどうするつもりだ。
リザは馬鹿だ。
リザが準備室へ来る時はいつも私がいるから平気だが、私がいない時は鍵を掛けて息をひそめるよう言い聞かせなければいけない。
「説教はあとにして…なんで裸なの?暑いの?」
未だ状況を受け入れられず困惑しながら尋ねる。
リザらしくない行動に驚きを隠せない。
リザはたまに突拍子もないことをするけど、一応真面目な子で、冗談を言うことなども滅多にない。
まあ、下心なしに、純粋な気持ちで、ただ暑いから涼しさを求め、裸になるなんてことは、ちょっと世間からずれているリザならばもしかしたらするかもしれない。
しかしリザはいつも私に服を脱がせられるのを恥ずかしがって、時には涙目になるほど嫌がるのに、自分から裸を見せるだなんて不思議だ。
「先生のこと、待ってたの」
「え?」
「せんせ、リザ、もう待ちくたびれたよ」
黒いソファーに寝そべる白い裸の体というコントラストがなまめかしいリザが、その姿とは正反対に、無邪気に笑う。
「先生、したい」
――したいって、セックスを?
再び固まる私。
上目遣いに私を見るリザ。
「…何を…」
リザに大股で駆け寄り、白衣を脱いで彼女の体を隠すようにばさりと上から掛けた。
「先生?」
「何を馬鹿なことを言っているんだ」
リザは被せられた白衣から顔を出して、不思議そうに私を見た。
「風邪を引くから早く服を着なさい」
「いやです」
リザは白衣を床に投げ捨ててむっと私を睨んだ。
「したいんだもん」
「…急にどうしたんだ」
「だって最近、先生、忙しかったから…全然話もできなくて…」
「確かにそうだけどな…」
「触ってほしいって思うのは変ですか?」
「…とりあえず白衣でも何でもいいから服を着てくれ。話はそれからだ」
リザはしぶしぶと体を起こし、床から白衣を拾って裸の体に羽織った。
「…先生の匂い…」
腕を袖に通しながら、リザがくんくんと鼻を鳴らして白衣の匂いを嗅ぐ。
白衣を着るとまたリザは体を縮こめてソファーに横になった。
教え子の裸に、私の白衣って…これはこれでやばいな。
思わず口を手で押さえる。
リザから誘われたことなんて初めてだ。
だってリザは恥ずかしがりやで、私に素肌を触られるだけでびくんと肩を跳ねさせて、こういうことになると控え目で…。
自ら裸になって「したい」だなんて手放しで喜びたいところだが、リザに誘惑されているという事実に驚いて、正直動揺していた。
リザをどう扱っていいのか分からなくて、恋人ではなく先生ぶってしまう。
私は、私がしたい時に所構わず、「ここじゃ嫌」なんて言って逃げようとするリザの体を押さえて、好き勝手に貪るくせに、ずいぶん身勝手な男だ。
いろんな女性と遊んできていつも優位に立ってきて、女性を振り回す方だった私が、年下の少女の裸に動揺してどうすればいいのか分からなくなるなんて、私はよほどリザに参っているらしい。
「…先生は私とするの嫌なの?」
「…嫌じゃないけど…学校だぞ」
「いつも学校でするじゃないですか」
「…そうだね」
ソファーの前に屈み込み、リザと視線を合わせる。
なんだかこの少女に手玉に取られている気分だ。
自分がどういう行動を取れば正解なのか分からない。
ここは神聖な学校だし、女の子が裸で男性を誘うなんてはしたないことをしてはないけない…なんて、珍しく教師のようなことを思う。
このまま誘われてしまってリザのいうまま流されるのは、「黒髪の貴公子」として名を馳せた遊び人の男としても、リザをリードする年上の恋人としても、生徒を正しい道に導く先生としても、いけない気がする。
「…先生」
ソファーに寝そべったまま、リザが焦れたように私のシャツの裾を控え目に引っ張る。
模範的な生徒のリザが、恥ずかしがりやの彼女が、勇気を出して誘ってくれるのは大変おいしい状況だけれど、変なプライドや地位が彼女を抱くことを邪魔する。
キスでもすれば満足するか?
リザはいつもキスだけで体から力が抜けて私の胸に寄り掛かってくるし。
「…せんせ…」
もう一度私を呼ぼうとしたリザの桃色の唇を塞ぐ。
床に膝をつき、素早く両手をリザの頭のうしろと頬に回し、こちらに引き寄せた。
いきなり舌をねじ込んでリザの舌と絡ませると、彼女が驚いたようにぎゅっと目を閉じる。
逃げる舌を執拗に追い掛けて、捕まえて、なじる。
「…待って…せんせ…っ」
リザが苦しそうに喉から声を出す。
私のシャツの胸元をくしゃくしゃにしてしがみついていたリザの手は、今は私を遠ざけようと私を押し返している。
それに構わず、舐めて、絡めて、吸って、甘く噛む。
唇を離すとリザは肩を揺らして息をし、頬は事後のように真っ赤だ。
つり目の目が今は眠る直前のように目尻が下がり、潤んでいる。
これで満足しただろうか。
リザの唇の端から溢れていり唾液を親指で拭ってやると、彼女はそれだけでびくりと全身を震わせた。
キスだけでずいぶんと反応がいいと首を傾げながら濡れた唇を指でなぞると、指に熱っぽい吐息が吹きかかる。
ふと思い当たることがあって、キスだけでぐったりとしてソファーに身を預けるリザを見下ろしたまま、白衣の上からそっと胸に触れる。
リザが呼吸をするたびに大きく上下する胸。
その胸の中心が形を持って尖っていた。
まさかと思って、胸から手を離し、今度は、太ももがぴたりと合わさって閉じられている内股の奥に無理やり指をねじ込む。
指先にとろりとした温かい液体が纏わり付き、予想が確信に変わる。
「……濡れてる」
「…え…?」
まだ頬を林檎のように赤くしているリザが首を傾げた。
「…あ…っ」
内股の中心を指で上から下までなぞるとリザが小さく声をあげて、細い指が再びシャツの胸元を掴んだ。
にやりと口の端を上げ、リザの腰を足で挟んでソファーの上に乗り上がり、小さな体の上に馬乗りになる。
キスだけでこんなに濡れるわけがない。
昔の肩書きだとか、恋人だとか先生だとか、あんなに悩んでいた意気地無しは、今はそんなことを都合よく忘れていた。
「ホークアイ君、どうしてこんなに濡れてるんだ」
「…えっ…、先生…?」
「キスだけのせいではないみたいだな」
体の中心を責める指の動きを止めないままリザに問い掛けると、彼女は不思議そうに私を見上げた。
「なあ、私を待っている間、何をしていたんだ?」
「…何って…服を脱いで、ここに寝て、先生を待っていただけです…」
愛撫する手を止めずに尋ねると、リザが快楽に声を震わせながら答える。
「本当に?一人で遊んでいたんじゃないのか?」
「…あそぶ…?」
「待ちきれなくて、一人でいいところを触っていたんじゃないのかな」
「…そんな…っ!」
リザがかあっと顔を赤らめる。
信じられないというように目を丸くし、口をぱくぱくさせながら私を見る。
リザは自慰という行為の存在を今、初めて知ったに違いない。
一応聞いてみただけだ。
まだ性に関して幼く、何より純粋なリザが、自分で自分を慰めることなどできるはずがない。
「…そ、そんなこと…!してないですっ!」
リザは未知の世界に翻弄されたまま、必死に違うと訴える。
大丈夫だ。
リザが否定せずとも、こんなお子様ができるわけないと最初から分かっている。
「…じゃあ…何を考えていたんだ?」
「…先生、遅いなって…」
「それだけ?」
「…暑い…とか…」
「リザは、私がいつもリザにしていることを思い出しながら待っていたんじゃないのか?」
そう言うと、リザの顔がぴくりと強張る。
「…思い出して…ないです…」
「嘘だな。だからこんなに濡れているんだ」
「ち、違います…!」
「私としたかったんだろう?だったら気持ちいいことを想像しても変じゃない。ここを濡らしてリザは私を待っていたわけだ」
「…違う…!」
声を荒らげて否定をするが、リザは先ほどのように私の目を真っ直ぐに見ない。
リザは私に嘘をつく時にいつも目を逸らす。
まったく本当に可愛らしい少女だ。
図星をつかれたせいで恥ずかしいのか、元から丸めていた体を、私の視線から逃げるようにさらに小さく縮こめた。
「どういうことを考えていたのかな、リザ」
「先生のことなんて…考えてない…っ」
「部屋に私がいなくて、すぐにできなくて落ち込んだ?待ちきれなくて服を脱いで、ソファーに寝て…。裸で、一人で、セックスの想像をするなんていやらしい子だな」
「待って先生…っ!…指、やめて…!」
「どうして?ずっとこうしてほしかったんだろう?」
「やだ…このままするのは嫌…っ」
指を敏感な芽に擦りつけるとリザの白い体はびくびくと跳ねて喜ぶが、彼女は嫌だと首を横に振る。
「どこを触られるのを期待してたの?胸?背中?首?それともここ?ああ、触るだけじゃ足りないか」
「だから…違います…っ」
「いつもの私の指の動きを思い出したりしたのかな?」
「…私は…ただ先生に触ってほしかっただけで…っ、先生の言うようなことは…」
分かっている。
リザはいやらしい子ではない。
リザは私に頭を撫でられるだけでもはにかんで喜び、触られるのが大好きだから、ただ純粋に温もりが恋しくてセックスをしたいのだろう。
待ちきれず服を脱いだのには驚いたが、裸になりいつも私がしている行為を思い出してしまうのも、淫乱なわけではなく自然なことだ。
リザは私に指摘されて初めて私とのセックスを思い出しているのに気付いたようだから、無意識にぼんやりと頭に浮かんだだけだろう。
リザがいつまでも処女のように純粋で汚れていないのは、私が一番よく知っている。
けれど、泣かせる寸前までリザをいやらしいと責めていじめるのはとても楽しいのも事実。
これで立場がいつもと同じになった。
「先生…、いつも通りがいい…っ」
「何を考えていたのかちゃんと教えて、リザ」
誘ってきたのはリザだから、少し意地悪をして可愛い姿を楽しんでもいいだろう?
あれこれ悩んでリザを焦れさせたくせに、結局、自分の都合がよくなると欲するままに小さな体を貪り出す私は、本当に身勝手だ。




 


お腹が痛い。
眠りから覚めたばかりの靄が掛かったような意識の中で、まず最初に痛みに顔を歪めた。
体が沈み込むようなふわふわとした馴染みのない綿のようなものの上に寝ている。
ここは…先生の家の寝室?
私は、私の部屋の古いベッドとは違う、あの大きなベッドの上に寝ているのね。
そうだ、今日は日曜日だ。
日曜日は先生の家に遊びに行く日。
いつも通り、先生の家に行って、おしゃべりをして、私がお昼ご飯を作って、それからキスをして、ベッドの上で抱き合って…。
ふと、何か温かいものに包まれていることに気付く。
それから髪を撫でられている。
胸の前にあるのは先生の腕だ。
私の背中にいる先生が、うしろから私をしっかりと抱き締めている。
温かくて、力強い逞しい腕が好き。
ふんわりとしたベッドの上、音のない静かな空間は世界に先生と二人きりだと錯覚させて、このままずっとこうしていたい。
幸せだと思うのと同時に、涙が出そうなほど胸が痛んだ。
さっきもそう。
先生の手が私の腰を離さないよう強く引き寄せて、私の中に入ってきた時も、先生に体の中まで満たされて幸せだったのに、ちょっと苦しかった。
奥を貫かれて体が震えるほど気持ち良いのに、少し前までこんな経験をまったくしたことないせいか、やっぱり少し痛い。
思わず「痛い」と言ってしまわないように唇を噛むことで必死だった。
体の芯までとろけそうなほど気持ち良いのにどうして痛くなるの?
先生と繋がってひとつになって、一緒に混ざり合って溶けてしまいそうなほど熱くなったのに、熱が冷めたあとは痛みだけが残る。
誰かに仕方がないことだと言われても、体がまるで先生を拒否しているみたいで悲しくなる。
お腹が痛い。
ずきずきする。
小さく深呼吸をすると、髪を梳かしていた先生の手の動きが止まる。
「…リザ?起きた?」
「…はい…」
先生がうしろから顔を覗き込んでくるけど、今は上手に笑えない気がして俯いた。
先生に、痛いだなんて知られたくない。
「…私…どのくらい寝てましたか?」
「少しだよ」
「…そうですか」
「まだゆっくりしていても大丈夫だろう」
「…はい…」
小さな声を出すだけでも下腹部に響き、鈍い痛みに耐えられなくて目を閉じる。
「…リザ」
「…何ですか…?」
「…まだ痛い?」
「…いいえ…」
隠そうと決意したばかりなのに痛いかと先生に聞かれて、一瞬体が強張った。
小さな動揺はしっかり腕に伝わってしまっただろう。
「…そうか」
平然を装って答えたけれど、先生は私の嘘に付き合ってくれたけれど、絶対にばれてしまった。
急に堪えていた涙が溢れそうになって唇を強く噛む。
私がどれだけ痛い思いをしてもいいけど、先生が傷付くのは嫌だったの。
心の中でこっそり私に謝ったりしないで、先生。
「…その…恥ずかしながら…今日はちょっと見境をなくしたんだ」
気まずそうな先生の声。
先生の唇が私の肩に押し当てられる。
触れられた場所を目だけを動かして見ると、肩にうっすらと歯型があり、先生に噛まれたことに、今、初めて気が付いた。
「制服からは見えないと思うけど…いや、そんな問題じゃないな。すまない…抱き着いてくるリザが可愛くて、ついイく時に…」
「別に…構いません」
ごめんなと謝りながら、今度は先生の手が下腹部にそっと触れる。
先生の大きな手の平がお腹を包み込むようにして触れて、汗ばんだ肌に体温がじんわりと染み込んでいく。
先生にお腹を撫でられると痛みが少しだけ紛れる気がした。
「…先生…」
「ん?」
先生に触られるのが好き。
先生とひとつになって、頭が真っ白になるほど気持ち良くなったあと、汗まみれの体で抱き合うのが好き。
裸の体をくっつけながら、何でもない話をして、キスをして、笑い合うのが何よりも好きなのに――また瞼が重たくなってくる。
「…せんせ…」
眠そうな私の声がどこか遠くで聞こえた。
先生を受け入れて疲れ果てた体に、お腹の痛みまで加わって、体が休息を訴える。
先生がお腹を優しく撫でる手がさらに眠気を誘う。
先生、リザは本当に先生のことが好きなの。
体がそれについていかないだけで、先生とこうすることは嫌いじゃないの。
だから謝らないで。
――早く大人になりたい。
私が早く大人になって、体も成長すれば、大人の先生のことをしっかり受け止められるのに。
思い通りにならないことばかりで歯痒くなるよりも悲しくなりながら、また眠りの世界に落ちていった。




 


「せんせ…っ」
学校の一角、薬品や分厚い資料が並ぶ化学準備室には相応しくない熱を帯びた声が私を呼ぶ。
いつもならば何にも興味を示さないように見える冷静な茶色い瞳は、今は泣いているように見えるほど潤み、私を切なく見下ろしている。
「…先生…」
「ん?」
私の体を跨ぎ、私の胸の上に両手をついて一生懸命腰を振っていたリザが、ふと動きを止める。
今日はリザが上で、彼女が動いており、私は彼女の細い腰を両手で支えるだけ。
勘違いしないでほしいが、これは強制的ではなく、リザから、今日は私が動きたいですと言ってきたのだ。
というわけで、仮眠を取るために家から持ち込んでいたタオルケットをソファーに敷いて、その上でひとつになって、少し動けば二人から溢れたものでぐちゃりと水音が立つほど情熱的に交わっていた。
化学準備室にあるソファーは古びていて、しかも、リザと私が二人で座れば隙間がなくなるほど小さい。
リザをソファーに押し倒す時は、彼女の身長が小さいために、ぎりぎりだがベッドのように使えるが、私が横になるとソファーから足がはみ出て不格好だ。
まあ、健気で可愛いリザの姿を下からじっくりと舐めまわすように見れるから、それでいいんだけれど。
毎日着る制服を汚すわけにはいかず、いつもリザと学校でセックスをする時は、必ず彼女を裸にする。
それに、化学準備室はクーラーがついていないために暑いのだ。
白く華奢な体が私のものを全部飲み込んで、快楽に震える姿を見守れるだなんて、こんな絶景はほかにない。
しかもリザの体は少し力を加えれば折れそうなほど細いけれど、年のわりに胸は豊かで腰を振る度に誘うようにふるふると揺れ、私の体を挟む太ももは柔らかく私を包む。
まだ子供のくせに、頬が幼少のあどけなさを残す丸い線を描いているくせに、数々の女性と遊んできた私を言葉をなくすほど魅了する官能的な体。
本当に最高である。
「…あの…」
リザは腰の動きを止めてから、呼吸を整えながらじっと私を見つめている。
「どうした?」
「…先生…その…」
「何?」
「…気持ちいい…ですか…?」
時に傷付くほど物事を単刀直入に言うリザらしくなく、少し躊躇いつつ、おずおずと彼女が尋ねる。
「ああ、とっても気持ちいいよ。かなりいい」
「…本当に?」
「本当に」
「…良かった…」
汗ばんだ短い金髪をくしゃくしゃと撫でながら答えると、リザは唇から小さくため息をこぼし、そのあと安心したよう笑った。
「…じゃあ、もっと…」
小さな手の平を私の胸に置き直して、リザがまた腰を動かし始める。
「…ん…、ん…っ」
私が教えた通りに、忠実に腰を前後にくねらせる度に、リザが唇から甘い声をもらす。
リザが動くと本当に気持ちいい。
リザの中は熱くて、彼女の純心な性格とは裏腹に、離さないようにしっかりと私に絡み付いてくる。
何より、可愛らしい声を絶え間なく上げて、幼い顔を真っ赤にさせて見下ろされると、背中がぞくぞくとする。
リザは自分で動くのが上手になった。
最初リザを上に乗せてみた時、痛いと顔を歪めたり、上手く動けなくて泣きそうになっていたりしたことを思い出すと、本当に彼女は上達した。
「…せんせえ…っ」
華奢な腰を貫くようにして私のものを咥え込み、先端を気持ちいい場所に擦り付ける動きを繰り返して、リザが前に後ろに小刻みに揺れる。
「…はあ…っ」
しかし、その規則的な動きがだんだんと乱れてきた。
胸の上に置かれた手が何か掴むものを求めるように拳を作る。 緩やかな動きがさらにゆっくりになり、腰の振り方が何の目的もなく揺れているようなほど、適当で雑だ。
そろそろ絶頂が見え始め、全身を駆け抜ける快楽を受け入れるだけで精一杯で、思うように動けないのだろう。
「リザ」
「…なん…ですか…っ?」
快楽に震えるというよりは、辛そうなリザの声が上から降ってくる。
リザが俯くと、顎から汗が雫となって垂れた。
額も汗でびっしょりだ。
「そろそろ疲れてきただろう」
「…疲れてないですよ…」
「腰の動きがめちゃくちゃだ」
「…そんな…」
私の言葉が気に障ったのか、リザむっと赤い頬を膨らませる。
「…ちゃんと…っ、んっ、動いてます…っ!」
見くびらないでくださいというような態度で、リザが大きく腰を振るが、それは一度で終わってしまう。
「このままじゃリザも私もイけないよ」
「…え…?」
「リザがこのまま動き続けたら、気持ちよすぎか、疲れ果てるかで、君が動けなくなって終わりだ」
「…そんな…そんなことないです…」
「無理しないの」
「無理じゃないです!」
リザは無理をしている時ほどむきになるから、分かりやすい。
「交代しよう」
「…嫌…」
「どうして?」
「…私が…先生を最後まで気持ち良くするんだもん…」
そういうことか。
今回、リザが自分から動くと言ったように、最近の彼女は処女から抜け出したばかりなのに、私ではなく自分で何かしようと背伸びばかりする。
「だーめ。交代だよ」
「少し…休んだら、また動けるから…」
「それまで持たない」
「…やっ!…ちょっと…っ!」
もうすでに動いていないリザの腰を掴んだまま上半身を起こし、器用に彼女の白い尻を胡座の上に乗せる。
急に私が動いたことにより、突然先端が奥に当たったことに驚いたのか、リザが小さな悲鳴を上げた。
「先生、もう待てないよ」
「…やだ…っ…せ、先生…っ」
「気持ちいい?気持ち良すぎる?」
「この格好で…動かないで…っ」
リザの腰を掴んで容赦なく下に落とせば、彼女は目尻に涙を滲ませて、高い声で喘いだ。
強すぎる刺激に耐えられないのか、リザは抵抗の言葉も忘れて、私にきつく抱き着いてくる。
何度か下から激しく突き上げると、リザは首をのけ反らせ、私のモノを締め付けながら達した。

行為の処理を終えたあとも私とリザはまだソファーに寝転がっていた。
また私が下で、リザが上。
小さな軽い体を胸に乗せて抱き締める。
「リザ、喉が渇いただろう。ペットボトルがあるよ。飲みなさい」
「…喉、渇いてないもん」
事後の余韻を楽しみたいところだが、リザが拗ねているため愛を囁き合う甘い会話ができない。
さっきからずっとリザはこれ見よがしに頬をぷっくりと膨らませている。
「リーザ」
「触らないでください」
膨らんだ頬を指で突くと、リザは思いきり顔を逸らした。
リザは一度機嫌を損ねると、冷静で真面目で通っているリザ・ホークアイらしくなく、ずっと不機嫌なままで、幼子のようにこちらの言葉を決して聞き入れない。
「リザ…なんで怒ってるの?」
「…だって…私がするって言ったのに…」
「先生が最高に気持ち良くして、イかせてあげたじゃないか」
「それが駄目なの!」
リザはむっと上目遣いで私を睨んだあと、ふと視線を下に落とした。
「…どうせ…リザは…下手くそなんでしょ…」
「下手くそじゃないよ。上手だった」
「じゃあどうして最後までやらせてくれなかったんですか?」
「だから、君も分かるだろうけど、あれじゃ最後までできないだろう。無茶をするな。体を痛めてほしくない」
「…無茶じゃないです…」
リザは私の胸にぺたりと片頬を押し付け、そのまま黙ってしまった。
このままこの話を続けても決着がつかない。
「リザ…急に積極的になってどうしたんだ?前は恥ずかしがって、服を脱がせようとしただけでも逃げようとしたことがあるのに」
「…それは…」
「それは?」
「…物心ついた時から女性が大好きで、飽きたら捨てて次の人と遊んで、気付けばたくさんの人を抱いてきた先生に、見合うひとになりたい…から…」
「…え?」
「…『子供の女』って、がっかりしてほしくないの…」
リザの口から発せられたとても褒められたものではない言葉に驚き、しばし口をあんぐりと開ける。
「私ってそんなにだらしない男か…?」
「はい」
迷う暇もなくはっきりと言われてしまった。
違うと否定できないところが悲しい。
確かに私は異性を意識した頃から、恋愛やセックスはたいした意味のない遊びだと思っていて、来る者拒まず去る者追わずで、女性関係が非常にだらしなかった。
しかし、リザに出会って、彼女が恋人になって私は変わった。
「過去のことを言われると何も言い返せないのが悔しいが…リザが気にしていることは分かった」
「…先生…?」
リザを抱き締めたまま上半身を起こして、再び彼女を膝の上に乗せると、彼女は首を傾げた。
リザと視線を合わせて、彼女を真っ直ぐに見る。
「リザを子供扱いするのは当然だ。君はまだ子供なんだから」
「…そんな…」
「でも、子供だからって別に馬鹿にしているわけでもないし、遠慮していることもない。リザは子供だけど、私の可愛い恋人だ」
頭をぽんぽんと軽く叩いてあからさまに子供扱いすると、リザは眉を寄せて不満そうな顔をした。
「大人になりたくて無茶するところが子供なんだよ」
「…うるさいです」
「さっきも言ったけど、子供だけど恋人だ。ちゃんと女性として見てるよ」
「…本当ですか?」
「本当だよ。…というか、今更だけど、私がこんなに女性に夢中になるなんてなあ。しかもまだ年端もいかない少女に」
「…子供の話はもういいです」
「昔はさ…女性と言い争いまでして分かり合うのが面倒で、適当にやり過ごしていた。キスでごまかしたりね」
「…最低ですね」
「そんな最低男もリザとはちゃんと分かり合いたいんだ」
こうしてちゃんと相手の話を自分からしっかり聞いて向き合うなんて、昔の私では考えられない。
「過去の女性が私に何をしたかなんて、考えなくていい」
リザはあまりにも特別な少女すぎて、ほかの女性と比べることすら不可能だ。
リザの金髪に指を差し込んで、頭を強引に胸に抱き寄せる。
「…君は…本当に、本当に可愛いな」
私の隣に並ぼうと背伸びをして努力をするリザの存在が愛おしいのだが、あまりに愛らしくてうまく表現できず、「可愛い」としか言えない。
女性の喜ぶ言葉は常に用意されていて、異性を見れば勝手に舌が動き、挨拶のようにぺらぺらと服装やら容姿やらを褒めていた私は、どこに行ったんだ。
「大人の真似をする君もいいけど…その必要はないよ。年齢も過去も関係なく、私は『リザ・ホークアイ』に骨抜きだから」
「…何だか上手くごまかされた気がします」
恥ずかしさの滲んだリザの声が可愛い。
胸に当たるリザの頬は行為中のように熱い。
上手く言えた気がしないが、何とか彼女に伝わったようだ。
「大人になりたいと思うリザには、まだ理解できないかもな」
「…そうですね。…また同じことで…先生のこと困らせるかもしれません」
「構わないよ」
そうですか、と、まだ不安そうな様子で頷くリザ。
また独りよがりな考えを抱いて無茶をした時は、何度でも今のリザが好きなのだと教えよう。
品行方正な優等生もまだまだ子供なのだ。
これは私しか見れないリザの意外な一面だと思うと嬉しくて、自慢して回りたくなる。
しかし、まだリザは幼いのにこんなにも虜にされてしまうなんて、彼女が大人になった時は私はどうなるのだろう。
リザの成長を見守りながら、私も一緒に成長しなくてはと苦笑した。




 


「先生!」
玄関の扉を開けると、外の寒さから頬を赤く染めた少女が、彼女にしては珍しく大きな声を出した。
近隣の住人に聞こえなかったかと少し冷や冷やする。
約束していた時間よりもずいぶんと早く部屋へ訪れた少女の腕を掴んで玄関へ入れ、急いでドアを閉める。
私に引っ張られるがまま家に入れられ、そして何故か私のことをじっと見ている美少女の名前は、リザ・ホークアイ。
私が担当するクラスの生徒の一人で、そして大切な年下の恋人だ。
「リザ、あけましておめでとう。今年もよろしくね」
「…はい…」
年末は私の仕事が忙しくてなかなかリザに会えず、そして新年を迎えてからは私もリザも親族に会うなどして恋人同士の時間を作れなかった。
年が明けてから彼女に会うのは今日が初めてだ。
「リザ?」
「…先生…」
新年の挨拶をしてもリザはどこか上の空で、私に腕を捕まれたまま、彼女はただじっと大きな紅茶色の瞳で私を見ている。
挨拶をしっかりするリザらしくないし、何より恥ずかしがりやの彼女にしては大胆な行動だ。
「リザ、どうした?とりあえず靴を脱ぎなさい。玄関は寒いだろう?」
「…はい…」
いつもと様子が違うリザの様子に首を傾げながら、緩慢な動きで靴を脱いでスリッパを履いた彼女の手を引いてリビングへ連れて行く。
「外は寒かっただろう?もっと暖房を…」
廊下とリビングを仕切る扉を閉めると、体がふわりと柔らかいものに包まれた。
視線を下に向けると腰に巻き付く茶色いダッフルコートの袖、体にしがみつくように拳を作った赤い手袋が見える。
そして背中には小さな温もり。
リザがうしろから私に抱き着いているのだ。
「…リザ、新年早々やってくれるな」
リザの意外な行動に目を丸くするほど驚くが、声には出さない。
「…先生…」
「何?さっきからどうした?」
「先生と会うの、久しぶりだから…」
私のセーターに顔を埋めるリザの声はくぐもっている。
「そうだな。ずいぶん会っていない気がするな」
「いつもは学校で会えるのに…こんなに会っていないのは夏休み以来です…。…だから…」
「寂しかった?」
「…先生は寂しくなかったんですか?」
「もちろんすごく寂しかったよ」
リザの赤い手袋を指から抜き取り、近くにあったテーブルに置く。
小さい手に指を絡めると、その手は少し冷たい。
「近くまで車で迎えに行こうと思ってたのにずいぶん早く来たな」
「そわそわして、家を早く出ちゃって…。それから、わざわざ車を出すことないです。歩いて来れます」
「毎回女の子に歩いて来てもらうのってなあ…。君は可愛いしぼうっとしてるからすぐ誘拐されそうで心配だ。何より女の子を一人で歩かせるなんて紳士のすることじゃない」
「先生は紳士なんですか?」
「うーん、どうかな。確かめてみる?まずはこっちを向いて」
「…嫌です…」
リザは自分から抱き着いてきたくせに顔を見られるのが恥ずかしいらしく、私がうしろを振り向いてもなかなか私の顔を見ようとしない。
「リザ」
リザがいくら私から逃げようとしても、力のない少女の体くらいいくらでも好きにできる。
私の背中に張り付くリザを引きはがして、正面から彼女をコートごと抱き締める。
「耳が冷たくなってる」
「先生、くすぐったいです…」
金のショートヘアから覗く耳に指先で触れるとリザが驚いたように肩をすくめた。
リザの耳がとても敏感なことは私がよく知っている。
「今年初めてのスキンシップがまさかリザからとはなあ」
小さな耳をくすぐり続けながら、先ほどのことを思い出して顔をにやけさせる。
「だ、だって…会うの久しぶりだから…」
「もしかして、玄関で勢い余って私に抱き着こうとした?」
未だに顔を伏せているリザが黙ってしまった。
リザが私の顔を見た時から挙動不審だった理由がやっと分かった。
リザは久しぶりに会えた私に抱き着きたかったのか。
まるで数十年ぶりの感動の再会だ。
しかし恋人同士ならば数日会わないだけでもひどく長い時間に感じるものだ。
いつも素っ気ない態度を取るリザがそう思っていたことがとても嬉しい。
「…新年早々…本当に…恐ろしい子だ…」
ぶつぶつと呟きながら、今の自分の顔はひどくにやけているんだろうなと思う。
「リザ、顔を上げて」
「…嫌です…」
「リザちゃーん、可愛い顔を見せて」
「やだ…」
「そういえば電話は何回かしたな」
「…そうですね…」
年末には深夜に、元旦には早朝にリザと電話で少しだけ話をした。
リザの父親が寝ている時間に電話をしたのだが、父親にばれないか内心焦りつつ彼女と話をした。
私と同じ焔を扱う錬金術師で、あの見るからに怖いリザの父親に、娘が先生である私と付き合っていることが知られたら、弁解の余地もなく燃やされそうだ。
「リザ…電話はリビングにあるんだよな?お父様にばれてないよな?」
「リビングと父の部屋は離れてますし、まさか私があの時間に電話しているなんて考えもしていないですよ」
「というか寒くないの?」
「毛布に包まってますから大丈夫です」
電話の向こうで可愛い恋人が毛布に包まって受話器を握る図は大変愛らしい。
しかし風邪を引かないのかと不安になる。
「お願いだから携帯電話を持ってくれよ…君は本当に今時の女子高生か?携帯電話があればメールもできるのに」
「必要ないです。直接伝えればいいじゃないですか。でも…こっそり電話をしたい時は欲しいなって思いました」
「先生がいつか無理やりにでも買ってあげるよ…」
「…電話といえば…元旦から先生の声が聞けて嬉しかったです」
「リザちゃん」
「はい」
「そろそろ顔を上げて」
「…いや…」
次々と嬉しいことを言ってくれるくせに、どうしても顔を見せるのは恥ずかしいらしく、セーターに顔を埋めている。
「顔を上げるまで耳たぶをぷにぷにするぞ」
「…そ、それは駄目ですっ!」
「ほーら、ほーら、どうだー」
耳たぶを指で挟んでくすぐると、リザは少女らしくないなまめかしい吐息を唇からもらした。
「……もう!先生の意地悪っ!」
ずっと耳をくすぐる攻撃が続くのは堪らないと折れたのか、頬を膨らませたリザがやっと顔を上げてくれた。
逃がさないように丸くなった頬をすかさず包み込む。
「意地悪な先生は嫌いです!」
眉をつり上げるリザはかなり怒っているらしいが、私には可愛いとしか思えない。
「意地悪な先生に会った途端に飛び付こうとしていたのは誰だ?」
「…そ、れは…」
リザが慌てて私から目を逸らして何もない壁の方を見た。
駄目だ。
リザの言動がいちいち愛らしい。
「リザ…先生はもう限界だよ」
「あ…ちょっと待ってください」
リザの頬を両手で包み込んだまま腰を屈め、口付けようとすると、リザが私を遮るように慌てて手を私の唇に当てた。
「何?おあずけプレイ?」
「ち、違います!…あの…あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「それはさっき言ったよ」
「私はちゃんと言えなかったので」
「ああ、私に抱き着きたくて堪らなかったからな」
「な…!」
リザが頬を赤くして抗議する前に唇をふさいでしまう。
舌を差し出すように促すとリザの指は私のセーターをぎゅっと握った。
「ま…まだ、言いたいことあったのに…」
口付けのあと、唇を唾液で濡らしたリザがぽつりと呟いた。
「何?」
「今年は去年よりもっと先生と仲良くしたいですって、言おうとしたんです…」
「それならもう一回しよう」
「そういう意味じゃないです!」
「じゃあどういう意味?」
リザの答えは聞かずにまた口付ける。
恥ずかしがりやの恋人に年明けからこんなに驚かされるなんて、今年は想像できないほど素晴らしい年になりそうだ。




 


リザの父親、錬金術の権威者であるホークアイ先生が講演会へ泊まりがけで出掛ける時、先生は家を留守にするため、リザは私のマンションへとやってくるのが決まりとなった。
教師と生徒である私とリザの秘密のお泊りの日だ。
「お…お世話になりますっ」
「まるで親戚の子が田舎に遊びに来たみたいだな」
麦藁帽子をかぶり、水色のストライプのワンピースを着て、それから両手で大きめのかばんを持ち、玄関で深くお辞儀をしたリザが可愛らしく、思わず笑ってしまう。
「…子供扱いですか?」
拗ねたように唇を尖らせたリザの頬を突いた。
「いや、いつも礼儀正しいなあと思って。もう三度目なんだから、そう固くならなくていい」
リザをクーラーの効いたリビングへ案内し、キッチンへ行って飲み物を用意する。
リザはソファーに座ると、かばんを足元に置き、麦藁帽子を取った。
「今時、レトロなワンピースに麦藁帽子とは…ポイントが高いぞ。変な人について来られなかったか?」
リザは私から冷えたジュースを受け取ると口を付けた。
「夏になると『外に出る時は絶対に麦藁帽子をかぶれ』って父がうるさいんです。普段は私が何しても興味なさそうなのに、変ですよね」
「娘が心配なんだよ。リザの知らないところで、先生はちゃんとリザのことを見てるよ」
「…じゃあ、私が講演会の度に友達の家に泊まるっていう嘘も見抜いてる…?」
リザがグラスを両手で持って首を傾げた。
「怖いことを言わないでくれよ…嘘だとばれていたら私はとっくに燃やされてる…」
「お父さん、講演会なんてできるのかなあ」
「ホークアイ先生の講演会は独特だが素晴らしいぞ」
こうしてソファーで肩を寄せ合っておしゃべりをし、夕方になるとリザがハンバーグを作ってくれて、小さなテーブルで笑い合いながら夕食を食べた。
「…あ!」
「ん?」
一緒にお風呂に入ろうとそれぞれ準備をしていると、リザが慌てた様子で声を上げた。
「先生、パジャマを忘れてきちゃった…」
かばんの中をいくら探してもないらしく、リザは残念そうに眉を下げて私を見上げる。
「な、何っ!?本当か!?」
しかし私は予想外の展開が到来して、つい笑顔でリザに聞き返してしまった。
「先生、どうしてそんなに嬉しそうなんですか…。白いワンピースの可愛いパジャマ、用意してたのに…」
落ち込んでいるリザを余所に、私は急いでクローゼットのある寝室へ駆け込んだ。
「その白いパジャマは今度の楽しみだ!リザ、今日はこれを着てくれ!」
リザにこれを着せてみたいと急に思い立ったのはつい先日のことで、まさかこんなに早く望みが叶うとは思わなかった。
私は運がいい。
いや、日頃の行いのおかげだ。

風呂から上がり、いつものようにリザとベッドの上でじゃれあいながら寛いでいた。
リザは私に背を向け、私がパジャマの変わりに渡したものを珍しそうに眺めていた。
「先生、真っ黒なシャツ、持っていたんですね。着ているところを見たことないです」
リザが身につけているのは私の黒のシャツだ。
当然サイズが合わなくて、袖で手が隠れ、肩の位置も違う。
裾はちょうど下着が隠れる長さだ。
「基本的にシャツしか着ない…というかシャツしか似合わないとヒューズに昔から笑われてな。いろんなシャツを持ってるぞ。最近は白しか着ないけど」
「先生、このシャツは着ないんですか?」
「じゃあ久しぶりに着ようかな。きっとかっこよくて、またリザは先生に惚れちゃうぞ」
「…そうかもしれません…。きっと先生に似合います」
照れた様子でリザがぼそりと呟き、冗談に対してリザが真面目に返したため、私も思わず照れてしまった。
この場でリザに何と言い返せば分からない。
リザの真面目で素直なところは大変愛おしく、リザに真っすぐに気持ちを伝えられると、こちらまで初恋をしているような初々しさを覚える。
「リザがこういい子だと…先生はこれから悪いことをしにくいなあ…」
「悪いこと?」
手を覆い隠してしまうシャツの袖を揺らして遊びながら、リザが聞き返した。
「そう、悪いところ」
シャツの衿から覗く抜けるように白いうなじに口付けると、リザの体がぴくんと跳ねた。
「リザは色白だね」
「そ、そうですか…?」
「ああ、真っ白だ」
背中からリザの体を抱き締め、首の一番上までしっかりと留められたボタンをゆっくり外していく。
リザは下着を下半身にしか身につけておらず、ボタンが外れるたびに肌がだんだんと晒されていくのが恥ずかしいのか、両膝を抱えて胸元に寄せた。
丸い膝小僧も雪のように白く、そして小さい。
シャツのボタンを全部外し終えると、私はベッドから起き上がる。
「リザ、こっちを向いて」
リザの答えを待たずに細い腕を引っ張り、リザを私の向かいに座らせる。
黒いシャツの奥にある肌は透き通るように白い。
そして体は優しい線で描かれており、ふっくらと丸みを帯びている。
「…本当に綺麗だ」
「…なんだか恥ずかしいです」
幼い顔には似合わない豊かな胸に強く吸い付いて痕を残すと、リザが声を出さぬように唇を噛んだ。
「…なんだか…うーん…お餅みたいだ」
「お、お餅っ!?」
指で押すと指先が柔らかく沈み込む乳房に頬擦りをしてうっとりとしていると、滅多に大声を出さないリザが声を荒らげた。
「え?だって、白くて、ふにふにしてて、柔らかいから」
「太ってるってことですかっ!?」
リザは私を押しのけると、体を隠すように胸の前で両腕を交差させた。
そして私を見るリザの目は明らかにショックを受けている。
「いや…そんなわけじゃ…」
「先生は女の人の体を服の上から見ただけでスリーサイズが分かるっていつも豪語してますけど、1キロ太ったのも分かるんですか!?」
「豪語なんてしてないぞ…。それより、リザ、1キロ太ったのか?」
「…あ…」
私には体重が増えたことを秘密にしたかったのか、リザは失言したことに気付き、慌てて両手で口を押さえた。
「思春期だし、太るのは当たり前だよ。そういう時期で、大人への一歩だ。それにリザは肋骨あたりにもうちょっと肉があった方がいい」
「…今の体が不満ですか?」
両手で口を押さえたままリザが不安そうに尋ねる。
「いや、そういう意味じゃなくて…。ええと、もちろん今のリザも少女らしくて好きだよ。…餅なんて表現したのが駄目だったな…。あ、マシュマロみたいだ!」
「お餅もマシュマロもあんまり変わらない…」
人差し指をリザに向け、ウィンク付きで自信満々に言ったのが、餅に例えられたことが相当嫌だったのか、両手で覆われた口元は本物の餅のように膨らんでいる。
確かに餅なんて言われて喜ぶ女性などどこにもいないだろうと深く反省する。
リザが恋人になる前、女性を口説くのと褒めるのは息をするように体に染み付いていて得意だったくせに、リザの前だと何故か失敗してしまう。
「リザは…アンティークドールみたいだよ。顔が整っていて、目が丸くて、肌が白くて、気品がある」
「…白々しいです。もういいです」
餅と言われたことが女性としてのプライドを傷付けられたのか、大抵のことはすぐ許してくれるリザは、唇を尖らせたままそっぽを向いてしまった。
「本当だよ。人形みたいに美しい」
リザは自分がどんなに魅力のある人間か気付いていないし、多分この先も気付かないだろう。
色素の薄い金髪のショートヘア、端正な顔立ち、丸い胸、細い腰、金の茂み、まだ肉付きの足りない頼りない腕と脚。
リザを構成するすべてが人形のように美しく、しかし作り物ではなく感情があるからこそリザという存在は繊細で、ますます魅了される。
「綺麗だよ。本当だ。これから歳を重ねるごとにもっと美人になる」
「そんな嘘じゃ誤魔化されません」
まだ怒っているリザの太ももに触れ、内股をくすぐると、再びリザの体がぴくりと跳ねる。
「先生、私、怒ってて…!」
「これから誤解を解こう。誤解が解けるまで、それから君が許してくれるまでやめない。あと、意地っ張りで頑固な生徒には体で教えるのが一番だと先生は思う」
リザの肩を掴んでベッドに押し倒すと、突然のことにリザは驚いたように私を見上げ、この綺麗な顔が快楽に翻弄されるともっと美しくなることを私は知っている。
まだ幼いリザが私に貫かれる度に理性がだんだんと薄らいでいくのが怖くて、目に涙をたくさん溜めて私の首に縋り付いてくる姿は本当に艶めかしい。
リザがただの可愛らしい容姿の女の子だったならば、好きにならなかった。
真面目で素直で、恥ずかしがりで、喧嘩をすると意地っ張りになるリザだからこそ愛おしく、つまらないことで誤解は生みたくないし、第一に嫌われたくないし、きちんと謝りたい。
しかし、恋人同士なのだから、その可憐な姿も恥ずかしがりやな性格もじっくりとねっとりと楽しみながら、体に教え込むようにして謝りたい。
「リザ、今日はシャツを脱がさないというプレイをしようか」
「えっ!?先生…!?」
リザをどう降参させるか、そしてリザはいつ私を許してくれるのか楽しみにしながら、リザの太ももの間に手を伸ばした。










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